■「有害」規制法案・条例の状況

 

茨城県青少年のための環境整備条例


<H18-1>

1.茨城県青少年健全育成審議会はフィルタリングの使用を条例に規定することなどを求める提言書をまとめた。県ホームページに掲載された提言書「青少年の育ちを支援するために」(平成18年3月)には、健全育成部会と環境整備部会による提言が掲げられている。青少年条例に関しては、対象年齢を拡大すること、育成の基本理念となる「青少年健全育成条例」の制定を検討すること、フィルタリングの使用を条例に規定すること--を求めるとともに、内容を効果的に周知する必要があると指摘。また、行政には新たなメディアに関する情報収集などを、関係企業には健全育成へのさらなる配慮などを要望した。この提言書は次のページで確認することができる。

▼茨城県女性青少年課のホームページ

http://www.pref.ibaraki.jp/bukyoku/bugai/josei/josei.htm

 

2.平成11年4月に閣議決定された「審議会等の整理合理化に関する基本的計画」では、国の審議会等について「会議又は議事録を速やかに公開することを原則とし、議事内容の透明性を確保する」とあるほか、議事録等を「一般のアクセスが可能なデータベースやコンピュータ・ネットワークへの掲載に努めるものとする」と具体的な公開方法まで示されている。

 

3.総務副大臣主宰の「情報公開法の制度運営に関する検討会」は2005年3月にまとめた報告書で、「審議会等及び行政運営上の懇談会等については、各行政機関において、今後とも、その議事内容を始めとして情報提供の充実を図る必要がある」と指摘している。この報告書は次のページで確認することができる。

▼「「情報公開法の制度運営に関する検討会」の報告」

http://www.soumu.go.jp/s-news/2005/050329_1.html

 

4.経済産業省が設置した「青少年の健全な育成のためのコンテンツ流通研究会」は2006年4月にまとめた報告書で、「地方自治体は、条例に基づく有害図書類の指定にあたっては、引き続き、指定基準の明確化及び審査会の透明性確保に努める」ことなどを要望している。この報告書は次のページで確認することができる。

▼「青少年の健全な育成のためのコンテンツ流通研究会報告書について」

http://www.meti.go.jp/press/20060418003/20060418003.html

 

5.1の提言書によれば、茨城県青少年健全育成審議会は「青少年の社会意識及び活動に関する調査」や「青少年のための環境浄化」をテーマに審議を続けてきたという。また、『茨城新聞』2006年2月27日付1面に掲載された「ゲームソフトを「有害」指定 県青少年条例で初」という記事によると、ゲームソフト「グランド・セフト・オート3」を審査した同審議会は、知事に「指定が適当」と答申したという(2006年3月6日指定)。

 

6.各都道府県が設置する青少年関係の審議会等についても、「一般のアクセスが可能なデータベースやコンピュータ・ネットワーク」、すなわち各都道府県のホームページに議事録などが掲載されるケースが増えている。ところが茨城県のホームページには、茨城県青少年健全育成審議会の議事録や会議資料がまったく掲載されていない。このような「透明性」の低さは何を意味するのだろうか。茨城県が「情報提供の充実」に消極的なのはなぜだろうか。また、審議会委員はこのような運営方法に疑問を感じていないのだろうか。(2006/6/8 07:40)

 

<H18-2>

 茨城県は2007年2月28日に開会した平成19年第1回定例会に「茨城県青少年のための環境整備条例の一部を改正する条例」(案)を提出した。条例案の内容は青少年のインターネット利用に関する努力義務の新設、淫行処罰規定に関する罰則の強化、青少年の深夜連れ出しに対する罰則の付与など。可決されれば2007年7月1日から施行される。平成19年第1回定例会は3月22日まで開かれる。(2007/3/5 07:40)

 

<H18-3>

1.茨城県は平成19年第1回定例会で可決された「県青少年のための環境整備条例の一部を改正する条例」と「県青少年のための環境整備条例施行規則の一部を改正する規則」を2007年3月27日に公布した。これによりフィルタリングの活用など、青少年のインターネット利用に関する努力義務が設けられ、保護者の委託または承認のない青少年の深夜連れ出しに対する罰則(30万円以下の罰金)も設定された。また、カラオケボックスを対象としていた青少年の深夜入場禁止施設に漫画喫茶、インターネットカフェが追加され、深夜入場させた場合の罰則も「20万円以下の罰金」から「30万円以下の罰金」に引き上げられた。このほか青少年に対する不純な性行為の罰則が「1年以下の懲役又は50万円以下の罰金」から「2年以下の懲役又は100万円以下の罰金」に強化されている。これらの規定は2007年7月1日から施行される。

▼「茨城県青少年のための環境整備条例と規則が改正されます」

http://www.pref.ibaraki.jp/bukyoku/bugai/josei/seisyonen/joureikaisei.htm

 

2.茨城県の橋本昌知事は2007年2月28日、平成19年第1回定例会に提案した「県青少年のための環境整備条例の一部を改正する条例」について、「青少年の健全育成を図るため、「茨城県青少年のための環境整備条例」を改正し、インターネットによる有害情報の閲覧の防止などに努めてまいります」と説明している。

▼「平成19年第1回定例会」

http://www.pref.ibaraki.jp/tiji/hatugen/hatugen070228.html

(2007/4/23 07:40)

 

<H18-4>

 「茨城県青少年のための環境整備条例」にフィルタリングソフトの活用などを定めた茨城県は、これらの規定が施行される2007年7月1日を前に条例の「しおり」を県ホームページに掲載した。同様の資料は、ほぼ全ての都道府県が作成しているものと思われ、実物を確認できた範囲では、東京都には「東京都青少年の健全な育成に関する条例のあらまし」、千葉県には「青少年健全育成条例のしおり」がある。

 近年、こうしたリーフレットをホームページに掲載する県は増えている(例:青森県、福島県、徳島県など)が、条例や規則に関する詳しい解説集をホームページに掲載しているのは茨城県などごく一部に限られている。

▼「茨城県青少年のための環境整備条例と規則が改正されました」

http://www.pref.ibaraki.jp/bukyoku/bugai/josei/seisyonen/joureikaisei.htm

(2007/5/25 07:40)

 


 

<H17-1>

 『朝日新聞』2004年12月6日付夕刊に掲載された「カメラ付きは「対面販売」? 「有害図書」自販機 自治体は規制」という記事によると、茨城県は「有害図書」を収納するカメラ付き販売機への対策として、青少年条例の改定を含めた対応を検討中だという。(2004/12/6 20:25)

 

<H17-2>

1.『山陽新聞』2004年6月4日付「カメラ監視の自販でも× 有害図書販売に罰金 岡山簡裁が初判断」という記事によると、監視カメラ付き自動販売機に「有害図書」を収納したとして、岡山県青少年保護育成条例違反の罪に問われていた図書販売会社元社長の判決公判が3日、岡山簡裁で行われたという。裁判官は「(監視カメラでは)青少年との識別が不十分で、十八歳未満が購入したケースもあった」として求刑通り罰金60万円を言い渡し、被告側は即日控訴したという。なお、岡山地検はいったん起訴猶予としたが、検察審査会が起訴相当と議決したため起訴したという。

※検察審査会とは、有権者の中からくじで選ばれた11人の検察審査員が、検察官の不起訴処分の妥当性を審査するところである。議決には、「起訴相当」「不起訴不当」「不起訴相当」があり、検察官はこの議決を参考にして事件を再検討し、起訴すべきかを改めて判断する。

 

2.自販機への「有害図書類」の収納禁止規定をめぐっては、埼玉県で年齢識別装置の有無により条例違反になるかが争われたことがある。一審の熊谷簡裁は平成11(1999)年6月9日、運転免許証を利用した年齢識別装置によって青少年が「有害図書」を購入するのは困難であり、可罰的違法性を欠くとして無罪とした(ただし、装置が作動していなかった自販機については有罪とした)。

 検察官が控訴したところ、東京高裁は平成12(2000)年2月16日、「本条例一四条一項は、文面どおり、自動販売機への有害図書等の収納を一律に禁止しているものであって、年齢識別装置が取り付けられているか否か、その機能、特質等によって、規制の対象としたり、対象外とするように適用を異にする運用を容認し、予定しているものと解することはできない」ことなどを理由に原判決を破棄、有罪としている。

<参考文献>

(1)倉田原志「年齢識別装置付き自動販売機への有害図書収納行為と表現の自由」『法学セミナー』第553号(2001年)、106頁

(2)島田聡一郎「年齢識別装置つき自販機への有害図書類の収納と埼玉県青少年健全育成条例一四条一項の罪」『法学教室』第246号別冊付録(2001年)、29頁

(3)野下智之「実務刑事判例評釈[83] 運転免許証による年齢識別装置を取り付けて作動させている自動販売機への有害図書等の収納行為について、埼玉県青少年健全育成条例一四条一項違反の処罰規定を適用するほどの可罰的違法性がなく、無罪とした原判断が是認できないとして破棄された事例」『警察公論』2001年6月号、55-60頁

 

3.神奈川県県民部青少年課が2004年11月付でまとめた「青少年の深夜外出防止対策と有害情報の効果的規制の考え方(案)」では、「図書類自動販売機への対応」として、次のような取組が提起されている。

「図書類自動販売機については、近年の情報機器の発達に伴い遠隔監視システム等付加的な機能を搭載したことをもって条例の除外を求める動きが各地で発生しているが、図書類自動販売機については、性的なインモラルな写真等を題材とした娯楽雑誌類が大半を占めているという実態に鑑み、図書自動販売機そのものを社会環境阻害因子としてとらえ、遠隔監視システム付き自動販売機を明確に条例の規制対象とするとともに通学路等への設置を禁止する必要がある」(10頁)

 群馬県も2004年11月、県青少年保護育成審議会が自販機規制のあり方を答申するさい、「県内には、有害図書等を収納する自動販売機が500台近くあり、地域住民とのトラブルが絶え」ないと説明している。ただ、『上毛新聞』2004年11月25日付によると、群馬県青少年保護育成審議会の提言には、「自販機設置の際に業者と地域住民が話し合いの機会を持つ仕組みづくり」などが含まれているという。

 図書自動販売機そのものが地域住民にとって「社会環境阻害因子」であるならば、いくら年齢識別装置や遠隔監視システムを導入しても、トラブルが解決するとは思われない。「業者と地域住民が話し合いの機会を持つ」という制度がどのようなものになるのか、そしてどのように機能するのか注目したい。(2004/12/6 20:25)

 

<H17-3>

 近年、遠隔監視システム付き図書自動販売機を規制対象として明確にするため、自販機の定義規定を設ける自治体が増えている。平成16年度第1回愛知県青少年保護育成審議会の会議資料「図書類自動販売機に係る定義について」によると、福島県、東京都、広島県、山口県、福岡県、熊本県、宮崎県の7都県が自販機の定義規定を有しているという。

 また、同審議会が開かれた2004年7月以降、10月には埼玉県が条例を改定し、自販機の定義規定を新設している。さらに、京都府は10月に公表した「青少年の健全な育成に関する条例の一部を改正する条例(案)の概要」で、「自動販売機等の定義を明確にし、テレビモニター等の電気通信設備を用いて遠隔地から監視するシステムが付いた自動販売機等についても、条例の規制対象であることを明らかにします」と説明。12月府議会に条例改定案を提出している。(2004/12/7 07:00)

 

<H17-4>

 『毎日新聞』(茨城南版)2005年6月16日付27面に掲載された「罰則、全国トップレベル 県青少年環境整備条例改正案 県会総務委で可決」という記事によると、県議会総務企画委員会は15日、6月定例会に提出されている県青少年環境整備条例改定案を全会一致で可決したという。改定案は22日に可決される見通し。(2005/6/17 07:45)

 

<ゲーム-1>

 『読売新聞』(茨城版)2005年6月16日付33面に掲載された「ゲームソフト 「有害」販売規制へ 県 指定方法巡り論議も」という記事によると、茨城県は、残虐な内容を含むゲームソフトを規制する方向で検討を始めたという。24日から県青少年健全育成審議会で具体的な協議に入るという。(2005/6/24 07:30)

▼「残虐な場面を含むゲームソフトの「有害」指定にかかわる主な動き」

http://hp1.cyberstation.ne.jp/straycat/watch/data/kiseki/game.htm

▼「愛知県・神奈川県等 ゲームソフトの「有害」指定 規制を誘発するマスコミ」

http://hp1.cyberstation.ne.jp/straycat/watch/news/archive/2005/49.htm

 

<H17-5>

 茨城県は県議会平成17年第2回定例会で可決された「茨城県青少年のための環境整備条例の一部を改正する条例」を6月27日に公布した。「有害」図書等の指定事由に「自殺」と「心身の健康を自ら害し、若しくは第三者をしてこれを害させる」が追加され、自販機の定義規定も新設された。また、自販機に収納された「有害」図書などの除去命令が新設され、命令から5日以内に除去しない場合には50万円以下の罰金。さらに、命令に係る期限の日の翌日から6月以内に再び「有害」図書などを自販機に収納した場合には、その自販機の撤去を命令じることができることとされた。10日以内に撤去命令に従わないときは6月以下の懲役または50万円以下の罰金。違反常習に対しても同様の罰則が課されることとなった。新条例は2005年11月1日から施行される。ただし一部については公布の日から施行されている。(2005/6/29 07:45)

▼「茨城県における青少年条例の改定(平成17年6月改定)」

http://hp1.cyberstation.ne.jp/straycat/watch/data/jyourei/taisyohyo/ibaraki/H17-6.htm

 


<その他>

 茨城県と社団法人青少年育成茨城県民会議は「子どもにとってのメディアを考える」シンポジウムを開催する。シンポジウムでは、NPO法人子どもとメディア代表理事の清川輝基氏による基調講演、社団法人日本小児科医会「子どもとメディア」対策委員会委員の家島厚氏らによるパネルディスカッションが予定されている。日時は2006年12月10日(日)午後0時30分~4時30分。会場は大洗文化センター(東茨城郡大洗町磯浜町6881-88)。参加希望者は11月30日(木)までに社団法人青少年育成茨城県民会議へ申し込む。申し込み方法などは次のページで確認することができる。

▼「「子どもにとってのメディアを考える」シンポジウム参加者を募集します!!(参加無料)」

http://www.pref.ibaraki.jp/bukyoku/bugai/josei/young/media/media.htm

(2006/11/27 07:25)

 

<その他>

 茨城県と社団法人青少年育成茨城県民会議は、子どもとメディアの関係をテーマとしたシンポジウムを2007年12月1日(土)に開催する。小児科医で社団法人日本小児科医会「子どもとメディア」対策委員会委員、家島厚氏の基調講演や「メディアとのよりよい関係づくりを進めるために」と題するパネルディスカッションが予定されている。時間は13時~16時20分。会場は市民ホールとよさと(つくば市高野1197-20)。参加費は無料で、希望者は11月20日(火)までにハガキ、FAX、Eメールいずれかの方法で社団法人青少年育成茨城県民会議に申し込む。シンポジウムのチラシなどは次のページで確認することができる。

▼「平成19年度「子どもにとってのメディアを考える」シンポジウムを開催します!」

http://www.pref.ibaraki.jp/bukyoku/bugai/josei/seisyonen/media/symposium.htm

(2007/11/14 07:40)


【関連報道】※「有害」規制監視隊が原紙もしくはそのコピーを確認できたもののみ。夕刊とないものは朝刊。

(1)『朝日新聞』2004年12月6日付夕刊「カメラ付きは「対面販売」? 「有害図書」自販機 自治体は規制」

(2)『読売新聞』(茨城版)2005年6月9日付35面「定例県議会が開会」

(3)『毎日新聞』(茨城南版)2005年6月16日付27面「罰則、全国トップレベル 県青少年環境整備条例改正案 県会総務委で可決」

(4)『読売新聞』(茨城版)2005年6月16日付33面「ゲームソフト 「有害」販売規制へ 県 指定方法巡り論議も」

 

【関連リンク】

残虐な場面を含むゲームソフトの「有害」指定にかかわる主な動き


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