ドキュメント「青少年社会環境対策基本法案」(4)

2003年

1月22日

1.日本劇作家協会、日本演出者協会、日本脚本家連盟、全国演劇鑑賞団体連絡会議幹事会、日本舞台美術家協会は連名で、「個人情報保護法案」「人権擁護法案」「青少年有害社会環境対策基本法案」、そして有事関連3法案に反対する「表現の自由に関する緊急アピール」を発表。「青少年有害社会環境対策基本法案」に対しては、「性にしても暴力にしても、時代や地域、宗教、風習の違い及び、表現行為の目的や性格によって、その表現の許容範囲は、千差万別」だとして、「国があらかじめ規定を設けて取り締まる必要はない」と主張している。

 

2.『日本経済新聞』に「「児童との性交渉勧誘、禁止を」 出会い系サイト 規制賛成が8割 警察庁アンケート」という記事が掲載される。また、「「表現の自由に反する恐れ」 日弁連が意見表明」という記事によると、日本弁護士連合会は21日、「出会い系サイト」の法規制に反対する意見を発表したという。『朝日新聞』などにも同様の記事が掲載された。

 

1月23日

 『朝日新聞』に「メディア規制法案 演劇5団体が批判」という記事が掲載される。

 

2月15日

 『全国市議会旬報』第1499号の「最近の意見書・決議の状況」によると、平成14年12月1日から平成15年1月31日にかけて、15の市議会で「青少年健全育成基本法の制定」に関する意見書が議決されたという。

 

4月4日

 『朝日新聞』(夕刊)に「日本の若者は殺さない 上 暴力犯罪エネルギーが激減」という記事が掲載される。若者の殺人率が過去40年で10分の1になっていることや、02年版犯罪白書における若者の暴行、傷害、強姦などの犯罪率が以前と比べて激減していることを指摘。「殺人を頂点とする暴力犯罪を数字の上で急激に減らしているということは、今の若者たちの大きな長所なのである」と結んでいる。

【関連情報】

 長谷川寿一・長谷川眞理子「戦後日本の殺人の動向 とくに嬰児殺しと男性の殺人について」(『科学』2000年7月号、岩波書店)では、若者の殺人率が戦後極端に低下したことを進化心理学の観点から分析している。

 

4月22日

 自民党内閣部会・青少年特別委員会が青少年施策について意見交換を行う。

 

4月23日

 『毎日新聞』(電子版)に太田阿利佐記者の「成人向けゲームのネット購入、専用キーで年齢認証 ソフト倫理機構」という記事が掲載される。

成人向けゲームのネット購入、専用キーで年齢認証 ソフト倫理機構

http://www.mainichi.co.jp/digital/solution/archive/200304/23/1.html

 

4月25日

 『全国市議会旬報』第1506号の「平成14年中の意見書・決議の議決状況」によると、平成14年中に48の市議会で「青少年健全育成基本法の制定」についての意見書が議決されたという。

 

5月25日

 『全国市議会旬報』第1509号の「最近の意見書・決議の状況」によると、平成15年2月1日から4月30日にかけて、5つの市議会で「青少年健全育成基本法の制定」に関する意見書が議決されたという。

 

6月12日

 『日本経済新聞』に「青少年育成本部が初会合」という記事が掲載される。

 

6月19日

 自民党内閣部会・青少年の健全育成に関する小委員会が青少年の健全育成に関する議員立法について意見交換を行う。

 

6月26日

 『朝日新聞』が「放送倫理・番組向上機構「BPO」、来月発足 視聴者の声集め迅速審理」という特集記事を掲載。7月1日に「放送と青少年に関する委員会」「放送と人権等権利に関する委員会」「放送番組委員会」の3つを統合して発足する「放送倫理・番組向上機構」(BPO)の役割を紹介している。また、BPOの理事長に決まった清水英夫氏(青山学院大学名誉教授)へのインタビュー「市民と橋渡し目指す」も掲載されている。

 

7月1日

1.「放送と青少年に関する委員会」「放送と人権等権利に関する委員会」「放送番組委員会」の3つを統合した「放送倫理・番組向上機構」(BPO)が発足。

 『月刊民放』2003年7月号に掲載された三好晴海氏(放送倫理・番組向上機構事務局長)の「視聴者と放送局の信頼強める」という記事ではBPOの仕組みを解説している。また、小玉美意子氏(武蔵大学社会学部教授)の「21世紀型市民社会の発想で」という記事では、自主規制機関が果たしてきた役割やBPOへの提言がまとめられている。

放送倫理・番組向上機構(BPO)

http://www.bpo.gr.jp/

 

2.『出版ニュース』2003年7月上旬号に長岡義幸氏(インディペンデント記者)の「「青少年育成施策大綱」と自主規制」という記事が掲載される。

 

7月3日

1.自民党内閣部会・青少年の健全育成に関する小委員会が「青少年健全育成基本法案」について関係省庁よりヒアリングを行う。

 

2.自由民主党ホームページ「デイリー自民」に「青少年健全育成基本法案について論議 青少年の健全育成に関する小委員会」という記事が掲載される。

青少年健全育成基本法案について論議 青少年の健全育成に関する小委員会

http://www.jimin.jp/jimin/daily/03_07/03/150703c.shtml

 

7月7日

 毎日新聞ホームページに「民放連、青少年有害対策法案再燃の動きに監視強化」という記事が掲載される。

民放連、青少年有害対策法案再燃の動きに監視強化

http://www.mainichi.co.jp/digital/network/archive/200307/07/8.html

 

7月9日

 自民党・奥山茂彦衆議院議員ホームページの「国会報告」に「『誉める』『鍛える』をキーワードに18歳自立社会を~ 青少年健全育成基本法案 ~」が掲載される。

『誉める』『鍛える』をキーワードに18歳自立社会を~ 青少年健全育成基本法案 ~

http://www.yamabikonet.gr.jp/KOKKAI/2003/_0703/0703_1.html

 

7月10日

 毎日新聞ホームページに「子供の脳:テレビゲームの影響などで報告書 文科省検討会」という記事が掲載される。

子供の脳:テレビゲームの影響などで報告書 文科省検討会

http://www.mainichi.co.jp/news/flash/shakai/20030711k0000m040155000c.html

 読売新聞ホームページにも「“ゲーム脳”追跡調査へ、子供1千人を10年間」という記事が掲載された。

“ゲーム脳”追跡調査へ、子供1千人を10年間

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20030710it13.htm

【関連リンク】

「脳科学と教育」研究に関する検討会

 

7月11日

 『東京新聞』(夕刊)に「「犯罪者の親 打ち首に」 長崎男児殺害 鴻池担当相が発言」という記事が掲載される。記事によると、政府の「青少年育成推進本部」で副部長を務める鴻池祥肇防災担当相は11日、記者会見で、同推進本部が7月末にまとめる予定の「青少年育成施策大綱」に対し、「スローガンばかりでは国民から批判が上がる」「出したかったらおれの首を取れ」などと述べたという。また、大綱の策定にかえて、青少年犯罪についての検討会を設置すべきだと主張したという。『朝日新聞』『毎日新聞』『読売新聞』『西日本新聞』などにも同様の記事が掲載された。

「少年犯罪 親も打ち首に」 鴻池大臣が発言

http://www.nishinippon.co.jp/media/news/news-today/20030711/news006.html

 

7月14日

 毎日新聞ホームページに「少年犯罪対策:検討会議を設置へ 青少年育成大綱は先送り」という記事が掲載される。

少年犯罪対策:検討会議を設置へ 青少年育成大綱は先送り

http://www.mainichi.co.jp/news/flash/seiji/20030715k0000m010138000c.html

 

7月15日

 『自由民主』に「青少年の健全育成へ議員立法検討 社会のあらゆる分野の取り組みを基本理念に」という記事が掲載される。

 

7月16日

1.自民党内閣部会・青少年の健全育成に関する小委員会は、青少年育成国民会議から意見聴取を行うとともに、「青少年健全育成基本法案」と「青少年を取り巻く有害社会環境の適正化のための事業者等による自主規制に関する法律案」の骨子案を了承。

 自由民主党ホームページ「デイリー自民」には「「青少年健全育成基本法案」の骨子案などを了承 青少年の健全育成に関する小委員会」という記事が掲載された。

青少年健全育成基本法案」の骨子案などを了承 青少年の健全育成に関する小委員会

http://www.jimin.jp/jimin/daily/03_07/16/150716a.shtm

 

2.『毎日新聞』(夕刊)に「ネットに氾濫 地雷もサリンも 表現の自由からんで規制は困難」という記事が掲載される。記事では、福井や静岡で起きた爆発事件にインターネットが絡んでいたとことや、ネット上にはサリンの製造方法まであることから、「犯罪に結びつく可能性のある情報を掲載したホームページ(HP)が氾濫している」と指摘している。

 

7月17日

1.朝日新聞ホームページに「自民がメディア規制の新法案 秋の臨時国会提出も」という記事が掲載される。

自民がメディア規制の新法案 秋の臨時国会提出も

http://www.asahi.com/politics/update/0717/005.html

 

2.日枝久・日本民間放送連盟会長は定例記者会見で、自民党の青少年関連法案策定の動きに対し「法律によって言論表現の自由を妨げるべきでなく、われわれマスコミ自身が国民の声を聞きながら自律的に直していくべきだ」と述べ、法案には反対であるとの考えを示した。

■民放連会長<定例記者会見>概要

http://www.nab.or.jp/htm/press/precon/20030717.html

 

7月18日

 『朝日新聞』に「メディア規制の動き 民放連会長が懸念」という記事が掲載される。記事によると、日枝久・日本民間放送連盟会長は17日の定例記者会見で、自民党が準備する「青少年有害環境自主規制法案」に対し、「表現の自由にかかわることを法律で縛るべきではない」と語ったという。

 

7月22日

 『新聞協会報』に「青少年関連2法案の骨子了承 自民党部会小委 民間事業者に自主規制求める」という記事が掲載される。

 

7月28日

 『朝日新聞』に「「テレビの見方」新教材貸し出し 制作の舞台裏、紹介」という記事が掲載される。記事によると、総務省は28日からテレビの見方を学ぶための小学生向け教材の貸し出しを始めるという。

 

7月29日

1.『自由民主』に「健全な青少年育成へ 内閣部会小委が2法案の骨子了承 わが党の努力に高い評価」という記事が掲載される。記事によると、7月16日に開かれた内閣部会・「青少年の健全育成に関する小委員会」の席上、意見聴取に招かれていた青少年育成国民会議の上村文三副会長は「国をはじめ社会全体で取り組むことを規定する基本法の制定は、長年の願いだった」として、青少年健全育成基本法案などに取り組んでいる自民党に感謝の言葉を述べたという。

 

2.日本民間放送連盟は「自民党「青少年健全育成基本法案骨子(案)」等に対する意見」を公表。

(報道発表)自民党「青少年健全育成基本法案骨子(案)」等に対する民放連意見の発表について

 読売新聞ホームページには「青少年健全育成法案の国会提出撤回を…民放連が意見書」という記事が掲載された。

青少年健全育成法案の国会提出撤回を…民放連が意見書

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20030729ic31.htm

 

7月30日

『東京新聞』に「「青少年法案」の撤回要求 民放連が自民に意見書」という記事が掲載される。自民党の法案を批判した坂本衛氏の「インチキな自主規制」というコラムも掲載されている。『毎日新聞』には「性や暴力表現規制法案示す 自民党小委」、『朝日新聞』には「自民の青少年法案 民放連、撤回求める」という記事が掲載された。

【関連情報】

1.新聞・テレビなどの一部メディアは、「有害」図書の審査などを行う「青少年健全育成審議会」(青少年条例に基づいて各都道府県が設置)に委員として参加し、公的規制のプロセスに組み込まれている。以下にメディア関係者が委員として参加している例を示す(既に任期を終えた者を含む)。

<東京都青少年健全育成審議会>

朝日新聞東京本社編集局記事審査部長、毎日新聞東京本社論説委員、読売新聞社論説委員、東京新聞編集局文化部長

<静岡県青少年環境整備審議会>

読売新聞静岡支局長、共同通信社静岡支局長、静岡第一テレビ報道制作局長、SBS静岡放送報道制作局長

 この他の青少年健全育成審議会についても、複数のメデイア関係者が委員として参加している。

 

2.メディアと審議会の関係については、以下の文献が詳しい。

(1)天野勝文「「取り込まれる」ジャーナリスト」『総合ジャーナリズム研究』第128号(1989年) 46-52頁

(2)天野勝文「「取り込まれる」マスコミ人 =全国版=」『総合ジャーナリズム研究』第144号(1993年) 72-79頁

(3)天野勝文「政府審議会は記者のウバ捨て山か 記者クラブ同様これも一つの癒着ではないか」『文芸春秋』1993年11月号 296-303頁

(4)天野勝文「新聞人の各種審議会への参加について」新聞労連編『新聞記者を考える』(晩聲社、1994年) 187-211頁

 

8月1日

 『新聞研究』2003年8月号に、三好晴海氏(放送倫理・番組向上機構事務局長)の「放送界の自主自律機関BPOが業務を開始」という記事が掲載される。7月1日に「放送と青少年に関する委員会」「放送と人権等権利に関する委員会」「放送番組委員会」の3つを統合して発足した「放送倫理・番組向上機構」(BPO)の仕組みを解説している。

 

8月3日

 『民間放送』に「民放連 青少年2法案 撤回求める 青少年特別委が自民党に意見書 自主規制での対応強調」という記事が掲載される。記事によると、民放連・放送と青少年問題特別委員会は7月29日、自民党「青少年の健全育成に関する小委員会」(田中直紀委員長)のヒアリングで、同党が準備する「青少年健全育成基本法案」などに反対する意見書を提出したという。また、ヒアリング後の記者会見で、石井修平・放送と青少年問題研究部会幹事は、「この問題はマスコミ全体の問題として、新聞協会にも理解を求めていきたい」と述べたという。ヒアリングには日本雑誌協会、インターネット協会、ビデオ倫理協会も参加していたといい、田中小委員長は、ゲームや映画などの業界からも意見を聞いたうえで、「同法案をできるだけ早く国会に提出したい」考えだという。

 

8月5日

 『新聞協会報』に「青少年法案 「国会への提出撤回を」 民放連 自民小委に意見表明」という記事が掲載される。

 

8月8日

 『朝日新聞』1面に「殺人・強盗件数が急増 重要犯罪検挙率5割切る 今年上半期」、社会面に「被害も加害も子ども深刻 進む凶悪化/低年齢標的 小学生に性犯罪46%増 上半期」という記事が掲載される。これらの記事によると、警察庁が7日に発表した2003年上半期の犯罪統計では、殺人事件の容疑者として検挙された少年は63人(10年前の同期比1.4倍)だったという。一方、小学生が被害にあった強姦や強制わいせつの認知件数は945件と過去10年で最も多かったという。

【関連情報】

1.『犯罪白書』によると、戦後の少年による殺人事件検挙者数が最も多かったのは、1951年と1961年の448人である。

2.『少年法・少年犯罪をどう見たらいいのか』(石井小夜子・坪井節子・平湯真人、明石書店)によると、検挙時に殺人(殺人未遂)として評価された場合でも、家裁では「殺すつもりはなかった」として傷害致死(傷害)として評価されることがあるという。例えば、1961年における少年の殺人事件検挙者数と家裁で殺人として処理された数は、それぞれ448人と396人であるという。

3.『朝日新聞』2003年4月4日付夕刊「日本の若者は殺さない 上 暴力犯罪エネルギーが激減」という記事では、若者の殺人率が過去40年で10分の1になっていることや、02年版犯罪白書における若者の暴行、傷害、強姦などの犯罪率が以前と比べて激減していることを指摘。「殺人を頂点とする暴力犯罪を数字の上で急激に減らしているということは、今の若者たちの大きな長所なのである」と結んでいる。

4.長谷川寿一・長谷川眞理子「戦後日本の殺人の動向 とくに嬰児殺しと男性の殺人について」(『科学』2000年7月号)では、若者の殺人率が戦後極端に低下したことを進化心理学の観点から分析している。

 

8月14日

 『日本経済新聞』に「テレビゲーム 子どもの成長に与える影響検証 25日から千葉で国際学会 社会とのかかわり考察」という記事が掲載される。記事によると、テレビゲームが子どもの成長に与える影響などを検証する「国際シュミレーション&ゲーミング学会」が25日から5日間、千葉県木更津市のかずさアカデミアパークで開催されるという。テレビゲームの影響については29日の分科会で検証されるという。

第34回国際シミュレーション&ゲーミング学会(ISAGA)大会

http://www.isaga2003.org/

【参考情報】

 坂元章氏(お茶の水女子大助教授)は、『児童心理』1999年2月号に掲載された論考「テレビゲームは子どもの心にどう影響するか(2) テレビゲームは暴力性を高めるか」で、1999年の段階ではテレビゲーム悪影響論を肯定する実証的研究は乏しいが、悪影響論を否定する十分な根拠が出されたわけではないと指摘。テレビゲームの現実性が向上したこと、接触量が増加したこと、実際に影響を受けたとみられる事件が起きていること、悪影響論を支持する新たな研究知見があることから、暴力に関する悪影響論は否定しにくいと論じている。

 

8月19日

 『日本経済新聞』に「「出会い系」の危うさ知って 文科省、来年度から啓発教育 児童買春などとの関係 全国で講座、実態訴え」という記事が掲載される。記事によると、文部科学省は19日、来年度から出会い系サイトやインターネットの「有害」サイトなどの「有害情報」から身を守るための能力を育てる「メディアリテラシー教育」に取り組む方針を固めたという。

 

8月27日

 NHK総合「おはよう日本」が、テレビゲームが子どもに与える影響などを検証する「国際シュミレーション&ゲーミング学会」について特集した。テレビゲームの暴力について分析した坂元章氏(お茶の水女子大助教授)の研究が紹介され、子どもへのアンケートで人気のあったテレビゲーム41本を調べたところ33本に「暴力で利益をえる」内容が含まれていたという。こうした結果などから、同氏はインタビューで「暴力以外の解決の仕方」を子どもが選べるようにするなど、テレビゲームを子どもに良いものにしていく取り組みが重要だと指摘した。

 

8月28日

 7月1日に発足した放送倫理・番組向上機構(BPO)は、7月に視聴者から寄せられた意見のうち、青少年に関するものの詳細を公表した。7月に電話・FAX・郵便・Eメールで「BPO視聴者応対窓口」に寄せられた意見は1215件。うち239件が青少年に関するものだったという。なお、放送局や番組名が特定できる意見については、当該局のBPO連絡責任者に「視聴者からの意見」として通知しているという。

BPO | 放送倫理・番組向上機構 | Broadcasting Ethics & Program Improvement Organization

 

9月1日

 『出版ニュース』2003年9月上旬号に「青少年健全育成にかかわる法案再び立法化を検討」と題し、「青少年健全育成基本法案骨子(案)《未定稿》」と「青少年を取り巻く有害社会環境の適正化のための事業者等による自主規制に関する法律案骨子(案)《未定稿》」の全文が掲載される。長岡義幸氏(インディペンデント記者)の「自民党の青少年健全育成基本法案骨子(案)」という記事も掲載されている。

 

9月3日

1.『民間放送』に原 寿雄氏(ジャーナリスト・BPO放送と青少年に関する委員会委員長)の「自民党青少年2法案の危険な狙い 法律で強制される「自主規制」とは?」という記事が掲載される。「青少年健全育成基本法」と「青少年有害社会環境自主規制法」の2法案について、(1)自主規制が法律で強制される、(2)「有害環境」の定義が曖昧で役人の恣意的判断の可能性が広すぎる、(3)「健全な青少年」の中身が明瞭でない――などの問題点を指摘している。

 

2.『朝日新聞』に「子に配慮、テレビの暴力表現減る 福井大助教授ら00、01年を調査 「自主規制がうまく機能」」という記事が掲載される。記事によると、村野井均・福井大助教授(発達心理学)らが民放で放送されたドラマやバラエティー番組を調べたところ、民放連が子どもに配慮した番組作りを申し合わせている午後5時から9時までの「青少年の時間帯」では、00年から01年にかけて、暴力的な場面および暴力の回数がいずれも減少していたという。

【関連情報】

1.民放連が行っている子どもとテレビに係る取り組みについては、『月刊民放』2002年8月号の特集「子どもとテレビ」にまとめられている。なお、こうした「自主規制」とは別に、民放連会員放送局の一部は、「有害」図書指定などを行う「青少年健全育成審議会」(青少年健全育成条例に基づき各都道府県が設置)に委員として参加し、公的規制のプロセスに組み込まれている。

 

2.諸外国における子どもとテレビに係る取り組みについては、以下の文献が詳しい。

(1)小平さち子「テレビにおける暴力描写をめぐる各国の動向」『放送研究と調査』1994年1月号

(2)向後英紀「アメリカにおける番組ランクづけシステムと"V-Chip"の導入 ~性・暴力番組からの青少年の保護(1)~」『放送研究と調査』1997年5月号

(3)村瀬真文「ヨーロッパ国際機関の青少年保護法制 ~EU(欧州連合),欧州評議会,EBUの原則の背景をさぐる~」『放送研究と調査』1997年6月号

(4)総務庁青少年対策本部『諸外国における青少年施策等に関する調査研究報告書 -有害環境、幼児虐待及び児童買春からの青少年保護を中心に-』(1998年)

 

3.暴力場面が子どもに与える影響に関する研究については、以下の文献が詳しい。

(1)H.J.アイゼンク;D.K.B.ナイアス『性・暴力・メディア マスコミの影響力についての真実』岩脇三良訳(1982年)

(2)小平さち子「欧米にみる“子どもに及ぼす映像描写の影響”研究」『放送研究と調査』1996年9月号

(3)佐々木輝美『メディアと暴力』(勁草書房、1996年)

(4)坂元章「10代の青少年と電子メディア ―心と体への影響―」『学術の動向』第6巻第9号(2001年)

(5)大渕憲一「暴力映像に影響を受ける子どもたち」『PSIKO』第20号(2002年)

 

4.『放送研究と調査』2003年4月号に掲載された服部弘「高まる“メディアの影響・効果”への関心 ~子ども大規模追跡調査の世界潮流~」という記事によると、日本、アメリカ、イギリスなど世界各地で生活環境が子どもに与える影響を調べる大規模調査が開始されているという。これらの調査の中には、映像メディアが子どもに与える影響を重要な調査項目に位置付けているものもあるという。

【参考リンク】

メディアの影響

 

9月5日

 『朝日新聞』に「ネットの危険 授業で学ぶ 「出会い系」犯罪から身を守るには」という記事が掲載される。記事によると、メールのやりとりを擬似体験させたり、「出会い系サイト」を擬似体験できる教育用ソフトを使うなど、「出会い系サイト」に関連した犯罪から身を守るための授業を行う学校が出始めているという。

 

9月7日

 『毎日新聞』に中曽根弘文・参議院議員の「学力論争より「心の教育」を」という意見が掲載される。青少年の規範意識や社会性の欠如、「有害」情報の氾濫、さらには凶悪犯罪が後を絶たない現状を注視し、青少年の健全育成を「国家の最重要課題」にするとともに、「家庭や学校でも今こそ「心の教育」に取り組むべき」だと主張している。

 

10月6日

 『GALAC』2003年11月号に坂本 衛氏(ジャーナリスト)の「断固として葬れ!! 青少年健全育成基本法案 青少年有害環境の自主規制法案」という記事が掲載される。

 

10月10日

 『朝日新聞』に「変わる政治 深い視点で 朝日新聞紙面審議会 03年度第3回」という記事が掲載される。記事によると、9月30日に開かれた朝日新聞紙面審議会で、渡辺正太郎委員は「既存の体制と距離を置き批判することも新聞社の大きな役割のひとつである。例えば、政府の審議会に新聞社が入って政策提言に参画すると、自らそれに縛られ、政府の先棒を担ぐ結果になる。慎重な対応が必要だ」と指摘。これに対し、吉田慎一東京本社編集局長は「政府の審議会への記者の参加について、朝日新聞は、抑制的に考えるのを原則にしている。参加要請があった場合は、数人の委員会で参加が適当かどうか検討して判断している。場合によっては報道の公平・公正、不偏不党の根幹にかかわりかねないからだ」と答えたという。なお、紙面審議会の司会は津山昭英・編集担当補佐だったという。

【関連情報】

1.津山昭英・編集担当補佐は、過去に「不健全」図書の審査などを行う東京都青少年健全育成審議会で委員を務めていた。津山氏が委員であった当時、朝日新聞は2001年1月25日に「有害情報規制 どういう結果を招くか」という社説を掲載している。この社説では、自民党「青少年社会環境対策基本法案」について、「メディアを政府や行政の監視下に置く」「メディアリテラシーの能力を育てることが大事だ」などと批判していた。ところが、2001年3月に改定・強化が予定されていた東京都青少年健全育成条例については一言も触れていない。

 

2.メディア関係者が政府の各種審議会にどれだけ参加しているかは、総務省行政管理局編『審議会総覧』で確認することができる。なお、審議会への記者参加を「抑制的に考えるのを原則にしている」はずの朝日新聞でさえ、一人で複数の審議会を掛け持ちしているケースがある。

 

3.メディアと審議会の関係については、以下の文献が詳しい。

(1)天野勝文「「取り込まれる」ジャーナリスト」『総合ジャーナリズム研究』第128号(1989年) 46-52頁

(2)天野勝文「「取り込まれる」マスコミ人 =全国版=」『総合ジャーナリズム研究』第144号(1993年) 72-79頁

(3)天野勝文「政府審議会は記者のウバ捨て山か 記者クラブ同様これも一つの癒着ではないか」『文芸春秋』1993年11月号 296-303頁

(4)天野勝文「新聞人の各種審議会への参加について」新聞労連編『新聞記者を考える』(晩聲社、1994年) 187-211頁

 

10月13日

 『民間放送』に「自民党の青少年2法案 映画界が反対の見解」という記事が掲載される。

 

10月14日

 小泉純一郎首相(自民党総裁)は、自民党のマニフェスト(政権公約)となる「小泉改革宣言 自民党政権公約2003」を発表した。7つの宣言とその中身を具体化した10項目の公約には、「人間力を高める教育改革―子どもたちの未来のために」として、次のような政策が掲げられている。

3.「青少年健全育成基本法」の早期成立

●青少年の健全育成に社会全体で取り組むため、国民の理解と協力を求めて青少年健全育成のための社会的規制を強化する。また、現在、参議院自民党で検討している「青少年健全育成基本法案」の早期成立をめざす。

小泉改革宣言

http://www.jimin.jp/jimin/jimin/sen_syu43/sengen/index.htm

 

10月23日

 『毎日新聞』(夕刊)に「TVゲームが少年の狙撃事件誘発 遺族、ソニー訴え 米で270億円賠償求める」という記事が掲載される。『朝日新聞』(夕刊)にも「「銃乱射はゲームの影響」と遺族 ソニー子会社など訴え」という記事が掲載された。

 

11月13日

 『毎日新聞』(夕刊)が連載「今週の「異議あり!」」で、「視聴率万能主義」をテーマにした岩崎貞明・メディア総研事務局長へのインタビュー「放送は社会の公共財 市民から違う尺度を提供できる仕組みを!」を掲載。この中で岩崎氏は、自民党が検討している「有害」社会環境規制について、「時間帯により番組内容を制限する自主規制は一定の効果を上げています」、「政府による青少年のための番組規制は、政権が気に入らない政治・選挙報道を排除するための一歩になりえます」などと述べている。

【関連情報】

1.民放連が行っている自主規制については、『月刊民放』2002年8月号の特集「子どもとテレビ」にまとめられている。なお、時間帯規制などの「自主規制」とは別に、民放連会員放送局の一部は、「有害」図書指定などを行う「青少年健全育成審議会」(青少年健全育成条例に基づき各都道府県が設置)に委員として参加し、公的規制のプロセスに組み込まれている。また、「青少年健全育成審議会」に限らず、政府や自治体の審議会には、多数のメディア関係者が委員として参加している。

2.メディア関係者が政府や自治体の審議会に参加することは、ジャーナリスト倫理に反するという批判がある。例えば、塚本みゆき氏(報道の自由を求める市民の会)は、『誰のためのメディアか』(花伝社、2001年)で次のように述べている。

私たちが見ていていちばん気になるのはメディアの上層部の人たちです。たとえば、政府の審議会とか委員会にこぞって参加しています。そのことがなぜ疑問に思えるかというと、結局はそこで出した結論には、メンバーの一人として共同責任を負うことになるからです。そうなれば批判できるはずがありません。そういうところで政府にとり込まれている様子が、私たちにはありありと見えてしまうのです。これは現場の記者たちがどんなに頑張っても、どうにもならないところです。(36-37頁)

 メディア関係者が政府や自治体の審議会に参加することは、「政権が気に入らない政治・選挙報道を排除する」のに役立っている可能性がある。また、審議会には「メディアの上層部の人たち」が参加していることから、メディアに依存する記者や文化人などは、この問題を取り上げないよう「自主規制」している可能性がある。

 

3.メディアと審議会の関係については、以下の文献が詳しい。

(1)天野勝文「「取り込まれる」ジャーナリスト」『総合ジャーナリズム研究』第128号(1989年) 46-52頁

(2)天野勝文「「取り込まれる」マスコミ人 =全国版=」『総合ジャーナリズム研究』第144号(1993年) 72-79頁

(3)天野勝文「政府審議会は記者のウバ捨て山か 記者クラブ同様これも一つの癒着ではないか」『文芸春秋』1993年11月号 296-303頁

(4)天野勝文「新聞人の各種審議会への参加について」新聞労連編『新聞記者を考える』(晩聲社、1994年) 187-211頁

 

11月24日

 『朝日新聞』に津田正夫氏(立命館大学教授)の「デジタル化 地域・市民番組に開放を」という意見が掲載される。アメリカやヨーロッパ、韓国などでは、ケーブルや衛星の商用化、デジタル化とともに、市民が製作した番組を放送するパブリック・アクセス・チャンネルが制度化されてきたと指摘。「非営利の市民放送への制度的な支援がない国は日本くらい」であることから、デジタル放送の利用は事業者に限るのではなく、「コミュニティーでの活用や市民・NPO活動などの自由なアクセス」を制度化すべきだと主張している。

【関連情報】

1.『月刊社会教育』2003年12月号の特集「情報を読み解き、発信する」では、津田正夫氏(立命館大学教授)らが、メディア・リテラシーやパブリック・アクセスについて論じている。

 

2.堀部政男氏(中央大学教授)は『アクセス権とは何か マス・メディアと言論の自由』(岩波新書、1978年)で、嫌煙権などは熱意をもって報道されるのに対し、アクセス権についてはほとんど取り上げられない理由を次のように分析している。

マス・メディアは、従来の権利については第三者的立場で報道することができたが、マス・メディアへのアクセス権となると、マス・メディア自身を当事者とする権利、換言すれば、マス・メディアを「被告(人)」席に立たせることになる権利であるので、これを扱えば扱うほど、危険が迫ってくると本能的に感じるのかもしれない。あるいは、このことは、現代フランス言論界の中心人物であるジャン=ルイ・セルバン=ショレベール(Jean-Louis Servan-Schreiber)が、「活字や音声を媒体としたメディアが大衆にほとんど報道しないテーマがあるとすれば、それはメディア自身についてである」と述べていることに通じるのかもしれない。マス・メディアは、この招かれざる客を無視するか、または、敵視さえしようとしている。(73-74頁)

 日本で「非営利の市民放送への制度的な支援」が立ち遅れている原因は、堀部氏の指摘にあるように、マス・メディアがアクセス権を「無視」「敵視」してきたことと関係しているのかもしれない。また、マス・メディアは「有害」規制法案などに反対するさい、規制よりもメディア・リテラシー教育を充実すべきだと主張してきた。メディア・リテラシーとは、「情報を読み解き、発信する」能力である。ところが、マス・メディアは、子どもが悪影響を受けないようにする――といった「読み解く」能力については積極的に言及したものの、「発信する」能力や「制度的な支援」の必要性については、ほとんど報じてこなかった。これも、マス・メディアがアクセス権を「無視」「敵視」してきたことと関係しているのではないだろうか。

 市民のアクセス権を「無視」「敵視」するマス・メディアに、「表現の自由を守れ」「市民の知る権利を守れ」などと主張する資格があるのだろうか? 市民のアクセス権を「無視」「敵視」するマス・メディアを権力が野放しにすることは、間接的な言論統制といえるのではないだろうか?

 

3.アクセス権やパブリック・アクセスについては、以下の文献が詳しい。

(1)堀部政男『アクセス権とは何か マス・メディアと言論の自由』(岩波新書、1978年)

(2)岩田 温「アクセス権 マス・メディアと市民の新しい関係」堀江湛編『情報社会とマスコミ』(有斐閣、1988) 97-122頁

(3)フランシス・J・ベリガン編『アクセス論 その歴史的発生の背景』鶴木眞監訳(慶應通信、1991年)

(4)津田正夫・平塚千尋編『パブリック・アクセス 市民が作るメディア』(リベルタ出版、1998)

(5)菅谷明子『メディア・リテラシー 世界の現場から』(岩波新書、2000年)

(6)津田正夫・平塚千尋編『パブリック・アクセスを学ぶ人のために』(世界思想社、2002)

 

12月2日

1.『読売新聞』1面に「青少年育成施策大綱の原案 「警察に調査権」検討 14歳未満 少年院送致も」という記事が掲載される。なお、原案の要旨も掲載されている。

青少年育成施策大綱原案、14歳未満の少年院送致も

http://www.yomiuri.co.jp/main/news/20031202i401.htmp

 

2.『毎日新聞』に「地検が冒陳で「アニメの影響」 山形・母殴殺地裁初公判」という記事が掲載される。

母親殺害:動機はアニメ番組の影響 初公判で検察が陳述

http://www.mainichi.co.jp/news/flash/shakai/20031202k0000m040069001c.html

 

3.自由民主党ホームページ「デイリー自民」に「青少年育成施策大綱案を了承 内閣部会・青少年特別委員会合同会議」という記事が掲載される。

青少年育成施策大綱案を了承 内閣部会・青少年特別委員会合同会議

http://www.jimin.jp/jimin/daily/03_12/02/151202a.shtml

 

12月5日

 『全国市議会旬報』第1528号の「犯罪防止・治安対策の強化を 9月定例会を中心とした意見書・決議の状況(上)」によると、平成15年8月1日から10月31日にかけて、6つの市議会で「青少年の健全育成に関する基本法の制定」を求める意見書が議決されたという。また、108の市議会で、警察官の増員や青少年の健全育成推進・非行防止などを求める「犯罪防止のための治安対策の強化」に関する意見書が議決されたという。

 

12月8日

 『東京新聞』に島野功緒氏の「番組審議委員はお飾り」というコラムが掲載される。

 

12月9日

 政府の青少年育成推進本部(本部長、小泉純一郎内閣総理大臣)は、青少年の育成にかかわる政府の基本理念と中長期的な施策の方向性を示した「青少年育成施策大綱」を決定した。大綱では、各種メディアにおける「有害」情報対策として、事業者・業界団体に自主規制の徹底を要請することや、関係法令による取り締まりの強化などが掲げられている。また、インターネットの「有害」情報対策については、フィルタリングサービスの普及や技術開発の支援、さらには児童ポルノやわいせつなデータの送信に対処するための刑事実体法の整備などが求められている。

【関連報道】

(1)『朝日新聞』2003年12月9日夕刊「14歳未満の触法少年事件 警察調査権を提言 青少年育成施策大綱」 ※解説記事あり。

(2)『毎日新聞』2003年12月9日夕刊「触法少年、少年院に 青少年育成大綱 刑事対応を強化」 ※解説記事あり。

(3)『読売新聞』2003年12月9日夕刊「14歳未満も警察「調査」 育成施策大綱政府が決定 少年院送致可能に」

(4)『日本経済新聞』2003年12月9日夕刊「少年院送致 14歳未満検討 政府が青少年育成大綱」

(5)『東京新聞』2003年12月9日夕刊「「14歳未満も少年院」検討 青少年大綱 警察調査 明確化も」

 

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