■「有害」規制ニュース

コンビニでの陳列方法が問題に 第3回有害図書販売防止対策検討委員会

 横浜市が設置する「有害図書の青少年への販売防止対策検討委員会」の第3回が2004年10月5日、横浜市庁舎で開催された。成人誌のシール止めやコンビニでの陳列方法に批判が集まり、シール止めに対しては、「青少年には見せないという趣旨が隠れている」などの意見が出たほか、コンビニでの陳列については、「徹底して子どもには見えないものにしてほしい」「コンビニでこういう本を売らないでほしい」などの要望が出た。第4回は11月上旬に開催される。

 

販売実態調査まとまる

 委員会では、まず始めに、調査会社が「有害図書の販売実態調査結果」を報告した。委員会で配布された資料によると、コンビニ130店、書店15店を対象とした今回の調査では、「有害図書」を置いていない店舗はコンビニで12店、書店で6店あったといい、「有害図書」を置いている場合でも、「書店のほとんどは、ビニール包装・ひも掛けをしている」のに対し、コンビニでは「シール留め以上の対策はあまりとられていない」ことが分かったという。

 

 さらに、コンビニのうち、「年齢制限等のPOP表示がない店が10店舗」あり、「18店舗が店の外側に向けて有害図書を陳列してい」たという。コンビニ業界には、「『成人誌』を陳列する際は(中略)18歳未満の方への販売・閲覧禁止の表示板を取り付ける」「『成人誌』をサンプルディスプレイに使用しない」ことなどを掲げた「『成人誌』取扱いガイドライン」がある。今回の調査結果を見る限りでは、ガイドラインが十分浸透していない、といえるかもしれない。

 

 なお、第2回の会合では「有害図書」の定義が問題となった。このため第3回の資料には、「目視調査の限界もあり、シール留め、ひも掛けなどをしてある書籍が置かれていた場合を『有害図書等』として、調査対象とした」という説明が付されていた。また、前回欠席した出版業界の代表からは、シール止めに関して、「(コンビニ業界から)グレーゾーンについて、コンビニで売るものは配慮してほしいと要請があった」「(実施は)出版社の自己判断」という説明があった。

(2004/10/12 23:00)

 

実態調査は何を意味しているのか

 調査会社に続いて、委員の一人がコンビニを実地調査した結果を報告した。「前回の委員会の翌日に関内地区10店舗を歩いてみた」といい、陳列状況を撮影した写真などを資料として配布。10店舗中2店舗でシール止めのシールがはがされていたことなどを説明した。また、シール止めや陳列状況について、「青少年には見せないという趣旨が隠れている」「(条例に規定する)有害図書だと思っている雑誌があった」と調査の感想を語った。

 

 この委員は、シール止めされた雑誌を取り出し、「シール止めは近くでもわからない」と、シールが目立たないことも批判。「割と簡単に取れる。問題ではないか」と、シールのはがし方も実演した。さらに、「もともとの有害図書ですら甘い判断。法律が守られていないという状況」と述べるなど、成人誌だけでなく、条例上の「有害図書」でさえ、区分陳列が不十分だとの認識を示した。一方、他の委員からは実態調査の意味を問う意見があった。

 

 「この調査結果は現状をどう表しているのか。過去に比べて緩やかになっているのか」と比較の対象がないことを指摘。「コンビニ・書店は努力していると思う。見えるところを規制していくだけでよいのか」と、青少年の健全育成には別の取組が必要ではないかと示唆した。また、出版業界の代表は、「取れやすいという話もあるが、取っているのは誰か。(シール止めの費用は)1コ大体15~20円かかる。シール止めされると、未成年には売れない」と反論した。

 

注1 委員が行った実地調査に関する資料は、公式資料に含まれていなかった。会議終了後に傍聴人がこの件を市職員に尋ねたところ、委員会の内部資料だという説明があった。

 

注2 売り上げに対するシール止めの影響については、出版業界の代表から、「当初は売れないと思ったが、販売的に成績は落ちなかった」という説明があった。

(2004/10/24 08:20)

 

そこにこういう本が置かれている

 「実態調査が出ているのでこれをどう防止していくか。子どもたちの目に触れないようにするにはどうしたらいいか――」。実態調査への疑問に対し、委員長は調査結果を踏まえて議論すべきだと述べ、「(コンビニに)この本を買いに行くのではなく、そこにこういう本が置かれている」とも付け加えた。また、青少年課長は、「(委員会の目的は)実態をどう変えていくのか、変えられるのか、変えるべきなのかを議論していただくこと」だと説明した。

 

 コンビニで扱われる成人誌には出版社がシール止めを行っている。出版業界の代表は「シール止めは7月から始まったが、日本中でシール止めの雑誌をどう判断するのか? 地方ではシール止めされたものを有害指定、個別指定している」「包括指定は売る側にしてみると判断しづらい」などの現状を訴えた。ただ、委員からは「判断が難しいと言われたがそれほど難しくないのではないか」「ビニール包装、ひも掛けをしないでシール止めでまかり通るのは疑問」などの批判があった。

 

 シール止めを不十分だとする意見とともに、コンビニで表示図書類が売られていたことも問題となった。コンビニ業界の「『成人誌』取扱いガイドライン」では、「表示図書類は取扱わない」こととされている。ところが、青少年課長はひも掛けされた雑誌を示し、「(コンビニで)18禁表示されたものが売られている。現に私はこれを買ってきた」と報告。これにはコンビニ業界の代表が「本部が推奨しているとは考えられない」として、店舗が独自に仕入れたとの見方を示した。

(2005/2/23 20:30)

 

陳列と閲覧はちがう

 こうした議論を受け、ある委員は「自主規制をグレードアップすることはできるのか」と質問している。コンビニ業界の代表は「ビニールに入れるのはコストの問題、(荷崩れするので)積み上げができないという問題が出てきてシール止めに落ちついた。持ち帰って検討することはやぶさかではない」と自主規制の強化に前向きな姿勢を示している。一方、「閲覧と販売はしないが、陳列と閲覧は明らかに違う」と指摘。出版業界の代表も議論が「置くのはいけない」に向かっていると批判した。

 

 これに対し、別の委員からは「見えすぎる場所に置くのはどうか」という発言があり、青少年課長からは「レンタルビデオ店は今のコンビニのようだったが、(成人向けのものは)今は囲いの中に入っている」という報告があった。また、各委員が最後に販売防止対策への意見を述べた際には、「陳列方法が一番問題だと思う。徹底して子どもに見えないものにしてほしい」「コンビニでこういう本を売らないでほしいというのが個人的な意見。コンビニで売る必要はない」などの意見が出ている。

 

 最後に行われたこの意見交換では、「(シール止めのシールを)18禁のシールにしてはどうか」「『18歳未満は読んではダメ』と書いてあれば、それが歯止めになるのではないか」など、現在は透明のシールに18禁表示を求める意見や、「基本的に有害図書についてはビニール包装、ひも掛けをしてほしい。雑誌を買ったときの抵抗感だが、ビニール包装、ひも掛けだと抵抗感がある」と包装の徹底を求める意見などもあった。委員会はこれらの意見を踏まえ、年度内に検討結果をまとめる予定だ。

 

<第3回「有害図書の青少年への販売防止対策検討委員会」席次表>

 

注3 委員会の公式資料には席次表が含まれていなかった。これは傍聴人のメモをもとに「有害」規制監視隊が作成したものである。なお、前回は出席していた市民局長は欠席している。また、委員会を取材した記者は1人もおらず、傍聴人は1人だった。

 

注4 横浜市ホームページには検討委員会の会議録が掲載されている。ただし、このレポートにおける委員らの発言内容は傍聴人のメモによった。

(2005/2/25 18:30)

【関連リンク】

▼横浜市青少年問題協議会

http://www.city.yokohama.jp/me/shimin/seishonen/seisyoukyou.html

※「有害図書の青少年への販売防止対策検討委員会」などの会議録が公開されている。

 

▼「「有害図書の青少年への販売防止対策検討委員会」を設置します」

http://www.city.yokohama.jp/me/shimin/seishonen/yuugai.html

 

グレーゾーン対策も検討へ 第2回有害図書販売防止対策検討委員会


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