■「有害」規制ニュース
残虐性を理由にゲームソフトへの規制が広がりつつある。2005年6月にゲームソフト「グランド・セフト・オートⅢ」を個別指定した神奈川県に続き、埼玉県、茨城県、石川県などでも、条例強化や個別指定が検討されている。
しかし、保護者の多くは別の対応策を求めている。東京都が2002年3月に発表した『青少年をとりまくメディア環境調査報告書』には、暴力的なゲームへの対応策を小・中・高校生の保護者に問う項目が含まれていた。「とてもそう思う」あるいは「ややそう思う」と答えた割合は、どの学年の保護者も「子ども自身の判断力を育てる」が最も多く、「法的な規制をすべき」が最も少ない。
ゲームソフトに関する施策例として神奈川県は2005年5月、県児童福祉審議会社会環境部会において、1.条例に基づく「個別指定」、2.条例の見直しによる「包括指定」の可能性の検討、3.ゲームソフト製作会社や発売元等への勧告又は要望、4.八都県市による共同的な取組の検討――の4つを示している。規制に偏ったこれらの施策は保護者が求めているものと異なる可能性がある。
【関連情報】
1.東京都生活文化局都民協働部青少年課編『青少年をとりまくメディア環境調査報告書』(2002年)によると、
【問9】
テレビゲームやパソコンゲームに含まれる暴力的な表現が子どもに及ぼす影響や、そうした課題の対応策についてどのようにお考えですか。あてはまる番号を○で囲んでください。(○はそれぞれ1つだけ)
という質問に対し、保護者は次のように回答したという(数値は「とてもそう思う」あるいは「ややそう思う」と回答した割合。選択肢の数は「どちらともいえない」「あまりそう思わない」「全然そう思わない」を加えた5つ)。
小学生保護者(724人) |
中学生保護者(666人) |
高校生保護者(676人) |
|
ア)最近のゲームには、暴力的な表現が多い |
71.3% |
71.1% |
64.0% |
イ)暴力的な表現が、自分の子どもに悪い影響を及ぼすのではないか心配である |
65.7% |
56.3% |
41.9% |
ウ)子ども自身の判断力を育てて、暴力的な表現による影響を防ぐ必要がある |
80.0% |
74.4% |
60.8% |
エ)親の責任で、暴力的な表現による影響から子どもを守る必要がある |
75.5% |
66.5% |
52.5% |
オ)ゲームソフト制作者及び販売者は、自主規制すべきである |
68.3% |
67.7% |
59.3% |
カ)法的な規制をすべきである |
53.9% |
47.9% |
41.2% |
東京都生活文化局都民協働部青少年課編『青少年をとりまくメディア環境調査報告書』(2002年)、116頁-118頁をもとに作成
ウからカの対応策に関する項目では、「あまりそう思わない」あるいは「全然そう思わない」と答えた割合は、どの学年の保護者も「法的な規制をすべきである」が最も多く、小学生保護者の13.9%、中学生保護者の17.4%、高校生保護者の16.4%が公的規制に慎重な考えを示している。調査の概要等は次のページで確認することができる。
▼「青少年をとりまくメディア環境調査報告書」
http://www.metro.tokyo.jp/INET/CHOUSA/2002/03/60C3M100.HTM
2.ゲームソフトの影響研究で知られる坂元章・お茶の水女子大教授は、『朝日新聞』(横浜版)2005年3月3日付で、ゲームを規制することについて、「ゲームのリアルな描写が、子供を暴力に走らせる場合があるのは否定しない」としながらも次のように述べている。
「規制することで、ゲームを楽しむ自由を奪ったり、自分で善悪を考えなくなったりする弊害もある。まずは教育で対応するべきで、規制は最後の手段だ」
教育による対応が可能であることは科学的にも証明されている。佐々木輝美・国際基督大学教授の『メディアと暴力』(勁草書房、1996年)によると、教育的介入や共同視聴によってメディア暴力に対する免疫力をつけることが可能だという。規制・勧告・要望などに依存することこそ、健全育成にとって最も有害なのではないだろうか。
【関連リンク】
▼残虐な場面を含むゲームソフトの「有害」指定にかかわる主な動き
(2005/7/8 18:45)