■「有害」規制法案・条例の状況

 

福島県青少年健全育成条例


<H18-1>

1.清水敏男議員(自由民主党)は2006年2月28日の福島県議会平成18年2月定例会で、県青少年健全育成条例について質問した。清水議員は深夜徘徊やゲームソフト規制の動きが広がっているとして、条例の内容を近年の社会環境に即したもの改めるべきだと主張。県生活環境部長は、「条例の適切な運用に努めるとともに、新たな形態の深夜営業店舗の進出や有害ゲームソフトなど、青少年の健全な育成の影響が懸念される新たな環境変化に適切に対応できるよう、必要な条例の改正について検討してまいる考えであります」と答弁した。

 

2.福島県では2006年10月1日付で県青少年問題協議会が廃止され、県青少年健全育成審議会に統合されている。これにより審議会の役割は、(1)条例に定められた事項の審議、(2)知事の諮問に応じた青少年の健全育成に関する事項の調査審議、(3)青少年の健全育成に関する事項の調査と知事への具申--の3つとなっている。また、福島県は2006年7月に県青少年健全育成審議会の委員を公募していた。委員の任期は2006年10月1日から2年間。

 

3.審議会における深夜外出規制の強化やゲームソフト規制などの調査審議は、10月以降に本格化するのかもしれない。(2006/10/23 07:40)

【関連リンク】

残虐な場面を含むゲームソフトの「有害」指定にかかわる主な動き

 

<H18-2>

1.『福島民報』2006年11月30日付21面に掲載された「カラオケボックスやまんが喫茶は鍵なし 県、青少年条例厳格化へ案」という記事によると、県は29日、県青少年健全育成審議会に対し、「県青少年健全育成条例の改正について諮問」したという。県は、カラオケボックスなどに個室を設ける場合は見通しを確保し内側に鍵をつけないことを義務付ける、青少年の深夜立入制限を努力義務から義務規定に強化する、青少年に入れ墨を施す行為への罰則を懲役刑を含めたものに強化する--などの案を示したという。審議会は来年1月に答申し、県は2月県議会へ提出する方針だという。

 

2.県青少年健全育成審議会の五十嵐敦会長は『福島民報』2006年11月2日付2面「2006ふくしま知事選 キーマンに聞く ⑤健全育成 青少年を支える政策を」という記事で、県青少年健全育成条例について「厳しい内容にしようとする向きもあるようだが、果たしてそれだけでいいのだろうか」と述べ、「新知事には、厳しさだけでなく、子どもを育て、支える取り組みを進めてほしい」と訴えている。

 

3.2006年10月に公布された「栃木県青少年健全育成条例」には次のような規定がある。

(複合カフェの構造及び設備等)

第50条 複合カフェを経営する事業者及びその代理人は、当該複合カフェの内部に区画(その内部においてインターネットの利用又は図書類の閲覧、視聴、聴取若しくは観覧を行わせる場所であって、その周囲を仕切り板等で囲った構造のものをいう。)を設けて営業する場合には、当該区画の出入口に施錠の設備を設けてはならず、かつ、当該出入口から当該区画の内部を常に見通すことができるようにしなければならない。

2 知事は、前項の規定に違反している者があるときは、その者に対し、必要な措置をとるべきことを命ずることができる。

 第50条第2項の命令に違反した者への罰則は「10万円以下の罰金又は科料」と定められている(第56条第7項第2号)。同条例は2007年4月1日から施行される。(2006/12/4 07:40)

 

<H18-3>

1.福島県は「「福島県青少年健全育成条例」の改正にあたっての考え方」を公表し、意見を募集している。公表された資料には、「有害環境への対応」「青少年に対する不健全行為への対応」「青少年の深夜外出への対応」の3区分ごとに、規制を新設・強化する案が示されている。具体的には、個別指定基準への「自殺」と「犯罪」の追加、団体指定の拡大、入れ墨・スカウトの禁止、「深夜」の定義拡大と青少年の深夜連れ出し禁止などを検討しているという。また、カラオケボックス、インターネットカフェ、マンガ喫茶などを「遊戯営業等」と定義。これらが個室や区画を設けて営業する場合は、内部の見通し確保と内側に鍵をつけないことを義務づけ、青少年の深夜立入も禁止するという。意見の募集期間は平成18年12月4日(月)~平成19年1月5日(金)。公表資料や意見の提出方法などは次のページで確認することができる。

▼「「福島県青少年健全育成条例」の改正について皆様のご意見を募集しています。」

http://www.pref.fukushima.jp/youth/pabukomehyousi.htm

(2006/12/5 07:40)

 

2.『福島民報』2006年11月30日付21面に掲載された「カラオケボックスやまんが喫茶は鍵なし 県、青少年条例厳格化へ案」という記事によると、県は29日、県青少年健全育成審議会に対し、「県青少年健全育成条例の改正」について諮問したという。審議会は来年1月に答申し、県は2月県議会へ提出する方針だという。

 

3.栃木県では2005年9月9日の栃木県青少年問題協議会において、「「栃木県青少年健全育成条例」全面改正スケジュール」という資料が配布されている。これによると、担当課は条例案について、文書学事課や検察庁などと協議するのだという。福島県は「提出していただいた御意見・御提案については、条例改正に当たっての参考とさせていただきます」と説明している。だが、意見・提案を1月5日まで募集し、審議会の答申を受け、その翌月に議会へ上程するとすれば、「参考」や協議の時間があるのだろうか。仮に意見・提案が条例案に反映された場合、それはむしろ事前に協議され、準備されていたということが考えられる。(2006/12/5 07:40)

 

<H18-4>

1.福島県青少年健全育成条例の見直しを予定している福島県は2007年1月23日、県青少年健全育成審議会から答申があったと発表した。審議会は「福島県青少年健全育成条例の改正にあたっての考え方」で県から示されていたすべての項目について、「適当である」と答申。これにより、県の思い描いた通りに規制が強化されることとなった。

▼「福島県青少年健全育成審議会の答申について」

http://www.pref.fukushima.jp/youth/newpage26.htm

 

2.福島県青少年健全育成審議会が「適当である」とした項目について、慎重な判断を示した審議会もある。たとえば、個別指定要件への「自殺」の追加について、大阪府青少年問題協議会は2002年11月、「自殺の方法を詳細に記したマニュアル本については、それが必ずしも自殺に結びつくとはいい難」いなどとして、「そのようなマニュアル本を青少年健全育成条例上の有害図書類とするコンセンサスは現時点では得られていない」と答申。また、団体指定については、岐阜県青少年育成審議会が2004年11月に「有害図書類の迅速な指定を行う方策のひとつとして、業界団体自体を指定して、業界が指定したものを有害図書類とする団体指定方式について審議したが、行政が罰則規定をともなう有害図書類の指定を行う以上は、基準が曖昧であってはならないことから、その採用については慎重な対応が必要である」と提言している。

 

3.福島県青少年健全育成審議会の透明性は非常に低く、どのような審議が行われたのかはわからない。ただ、答申の内容が県から示された案をそのまま肯定したものであることを踏まえると、かなり「適当」な審議が行われたのではないかと思われる。(2007/1/26 07:30)

 

<H18-5>

 福島県は2007年2月20日に開会した平成19年2月定例会に、「福島県青少年健全育成条例の一部を改正する条例」(案)を提出した。定例会は3月16日まで開かれる。条例案は最終日の本会議で可決される見通し。

▼県議会ニュース

http://www.pref.fukushima.jp/gikai/fu_1/news/200702/20.html

(2007/2/23 07:40)

 

<調査結果>

 福島県は2007年3月8日、自販機の設置状況や書店、コンビニ、インターネットカフェなどにおける青少年の健全育成対策をまとめた平成18年度「社会環境実態調査結果」を県ホームページに掲載した。これによると、図書類自動販売機等は前年度の244台から27台(11.1%)減少するとともに、16台が未使用のため実質稼動台数は201台だったという。区分陳列については、アダルトビデオ等取扱店126店の84.9%、書店131店の71.0%、コンビニ403店の87.1%が適切に行っている一方、成人向け図書類を扱うネットカフェ等8店では62.5%が不十分な状況だったという。また、フィルタリングシステムの導入状況については、ネットカフェ等20店舗中、全台導入が5店(25.0%)、一部導入が7店(35.0%)、未導入が8店(40.0%)であることがわかったという。こうした項目のほか、区分陳列や年齢確認の具体的方法などもまとめられている。調査結果は福島県青少年グループホームページからダウンロードすることができる。

▼福島県青少年グループ

http://www.pref.fukushima.jp/youth/index.html

(2007/4/16 07:40)

 

<H18-6>

1.福島県は「福島県青少年健全育成条例の改正趣旨及び内容」についての説明会を開催すると発表した。県内各地で5月15日(火)~6月7日(木)の間に7回開催される予定。参加希望者は希望会場と人数を福島県生活環境部青少年グループに申し込む。詳しい日程や新条例などは次のページで確認することができる。

▼「福島県青少年健全育成条例の一部改正に係る方部別説明会について」

http://www.pref.fukushima.jp/youth/joureikaiseisetsumeikai.htm

 

2.福島県では平成19年2月定例会で「福島県青少年健全育成条例の一部を改正する条例案」が可決され、2007年3月20日に公布されている。新条例は一部を除き2007年7月1日から施行される。(2007/5/10 07:40)

 

<7>

1.福島県は2007年5月28日、県ホームページに掲載している知事定例記者会見の会見録を更新した。新たに追加された2007年5月22日の会見録によると、会津若松市で高校生が母親を殺害した事件に関連して「青少年に対する有害図書の規制の強化や見直しについてはいかがでしょうか」という質問が出ている。この質問に副知事は、「今後どう対応していったらいいかということについて、改めて担当部局の方でこれから整理していきたい」と回答。また、「つい最近条例を改正したばかりだと思うんですが、さらにまたバイオレンス的な図書に関して改正、強化するという方向なんでしょうか」という質問には、「現行の育成条例の中で対応が可能な話ですので、先ほどの検討というのは条例の見直しを前提にしたものではありません」と答えている。

▼「知事記者会見録」

http://www.pref.fukushima.jp/chiji/c_kaiken_h190522.html

 

2.暴力的な内容の図書は個別指定により「有害図書」指定することができる。これは規制制度の初歩の初歩である。質問をした記者はごく基本的な条例の仕組みさえ知らないか、条例を強化させたい意図があったのではないかと思われる。「今回の事件と関連するような図書というのを特定されていますでしょうか」という質問も指定を促す狙いが感じられる。なお、個別指定の場合は指定された図書の名称が告示されるので、事件と関連した図書を指定した場合、その図書が何だったのかを広く知らせることになる。(2007/5/29 07:45)

 

<8>

1.朝日新聞ホームページに2007年7月10日付で掲載された「「自殺・犯罪誘発」防げ」という記事によると、福島県は殺人や暴走行為の描写がある雑誌など8点を11日の審議会で審議するという。

▼「「自殺・犯罪誘発」防げ」

http://mytown.asahi.com/fukushima/news.php?k_id=07000000707100004

 

2.1の記事には「規制で少年犯罪がどこまで防げるのかは明確ではない」という部分がある。マスコミはしばしば“少年犯罪の抑止”が規制の目的であるかのように報じるが、果たしてそうなのだろうか。例えば田宮裕「わいせつに関するアメリカ大統領委員会の報告書について(二)」『ジュリスト』第478号によると、ポルノ規制について検討したアメリカ大統領の諮問委員会は1970年にまとめた報告書で、「未成年者についてはその親が子供の監督上妥当かどうかを自己決定すべきであって、立法はそれを援助するという基本的態度を堅持するのがのぞましい。いくらこのような立法をしても、未成年者から隔離しおおせるかは疑問だし、見せることが利点になる場合もある。こうした事情を総合判断して自らコントロールする権利が親にはある」として、「州は、一定の性的物件を未成年に対して商業的に販売しまたは販売のため陳列することを禁止する立法をすべきである」と勧告したという。この場合、規制の目的は“少年犯罪の抑止”ではなく、“親の自己決定権の尊重”といえるだろう。

 青少年条例による規制目的を“少年犯罪の抑止”とだけ捉えることは問題がある。記事を書いた記者は何を根拠にこのような表現を用いたのだろうか。この記事の表現では、図書やゲームの売上と犯罪などの統計を重ね合わせ、規制の是非や「有害/無害」を論じるというバカげた事態を誘発しかねない。

 

3.1の記事には「ゲームソフトも新たに指定対象となった」とある。全国に先駆けて2005年6月にゲームソフト「グランド・セフト・オートⅢ」を個別指定した神奈川県では、県児童福祉審議会社会環境部会において『朝日新聞』2003年10月7日付22面に掲載された「過激シーン、即現実に ゲームソフト 販売規制へ母子ら活動」という記事が資料として配布されたことがある。この記事ではアメリカで起きた銃乱射事件の容疑者が「グランド・セフト・オートⅢ」をプレーしていたこと、このソフトが日本でも発売されたことなどを報じている。また、アメリカと日本のレーティング制度を比較し、「評価システム日本は未熟」という小見出しもつけられていた。朝日新聞の記事はゲームソフトの規制を検討していた神奈川県にとって追い風になったものと思われる。なお、この件について朝日新聞はまったく報じていない。(2007/7/11 07:40)

 

<9>

1.福島県は2007年7月20日、粗暴性や残虐性を助長するなどとして、雑誌3点、書籍2点、コミック3点の「有害図書」指定を告示した。同県は2007年3月に県青少年健全育成条例を見直し、指定理由に「自殺」と「犯罪」を追加。今回指定された8点のうち5点については、指定理由に「自殺若しくは犯罪を誘発」が挙げられていた。

 

2.「有害図書」規制の強化について福島県の副知事は2007年5月の記者会見で、「今後どう対応していったらいいかということについて、改めて担当部局の方でこれから整理していきたい」と答えていた。担当部局(=県民環境総務領域青少年グループ)においてどのような議論があったかは不明だが、東京都では2007年6月に「甚だしく残虐性を助長し、著しく自殺又は犯罪を誘発」するとの理由で雑誌1点が「不健全図書」指定されている。今回の指定には東京都の影響があったのかもしれない。

 なお、子どもを性行為の対象とするコミックを集中的に指定した京都府は2007年6月の発表資料で「19年1月から現在までの間、「子どもを性行為の対象とするコミック」を指定した都県は4都県4冊」と説明していた。また、静岡県は東京都が2007年1月に指定した『復讐の本』を2007年5月に指定している。

 

3.マスコミ、学者、運動家などは包括指定批判には熱心な場合が多い。しかしながら、個別指定の定義は包括指定よりも概括的である。また、性表現に限らず、様々な表現を規制でき、写真や絵だけでなく文章を規制することも可能だ。

 マスコミなどが包括指定に比べ、様々な表現を規制できる個別指定に寛容な理由はわからないが、「九二年三月の都議会で成立した改定案は、包括指定・緊急指定抜きの、反対運動側からみれば「比較的ましな」内容のものになった」(『子どもというレトリック』88頁)という見方がある。皮肉なことに、この種のレトリックが「包括指定や緊急指定に反対すること」=「反対運動」というイメージを作り上げ、最も強力な規制制度である個別指定に関心が向くことを妨げているのかもしれない。(2007/7/30 18:40)

【関連リンク】

個別指定は包括指定よりも「理想的」なのか

規制強化を招いた規制反対運動

 


<1>

 『福島民報』2003年9月1日付「青少年性犯罪増加に歯止め 県健全育成条例を厳罰化 目立つ甘さ改善 違反行為や有害図書販売 罰金引き上げ 来年度にも施行」という記事によると、福島県は県青少年健全育成条例を改定・強化する方針であるという。他の都道府県の条例や県警本部の意見を参考に、罰金引上げや区分陳列規制強化などの改定内容をまとめ、5日に開かれる県青少年問題協議会に諮問、平成16年度の施行をめざすという。(2003/9/3)

【関連リンク】

▼福島県青少年健全育成条例

▼福島県青少年健全育成条例施行規則

http://www.pref.fukushima.jp/reiki/reiki_menu.html

 

<2>

1.毎日新聞ホームページに2003年9月9日付で掲載された「性や暴力誇張するメディアの有害情報から青少年保護 県、健全育成条例改正」という記事によると、福島県は年度内を目標に県青少年健全育成条例を改定する方針であるという。具体的には、自動販売機での「有害」図書の販売違反に懲役刑を導入するなどの罰則強化や、インターネット接続業者に対する規制について検討するという。(2003/9/10)

▼「性や暴力誇張するメディアの有害情報から青少年保護 県、健全育成条例改正」

http://www.mainichi.co.jp/area/fukushima/news/20030909k0000c007003000c.html

 

2.自動販売機での「有害」図書の販売違反については、山口県が2002年3月に県青少年健全育成条例を改定し、知事による営業停止命令に違反した場合の罰則として「6月以下の懲役又は50万円以下の罰金」を導入している。(2003/9/10)

【関連リンク】

▼「山口県青少年健全育成条例」

http://www.pref.yamaguchi.jp/gyosei/kenmin/youth/jourei/jourei_0.htm

▼「山口県 自販機規制を強化 命令違反には懲役刑も」

http://hp1.cyberstation.ne.jp/straycat/watch/news/archive/2002/14.htmp

 

3.インターネットに係る規制(努力義務)は、福岡県が1997年3月、鳥取県が2001年12月、大阪府と奈良県が2003年3月にそれぞれ導入している。(2003/9/10)

【関連リンク】

▼「青少年条例による「有害」規制の状況一覧 -インターネット関連-」

http://hp1.cyberstation.ne.jp/straycat/watch/data/jyourei/ichiran/internet.htm

▼「鳥取県 青少年条例を改定 インターネット利用者らに努力義務」

http://hp1.cyberstation.ne.jp/straycat/watch/news/archive/2002/07.htmp

 

<3>

 『福島民報』2003年9月6日付「県青少年育成条例の厳罰化 県青少年問題協議会 県の方針了承」という記事によると、福島県青少年問題協議会は5日、県青少年健全育成条例を改定する県の方針を了承したという。また、協議会では、インターネットで「有害」情報を入手するケースを考慮し、条例に反映すべきだとする意見が出たという。県は、10月の次回協議会までに改定案をまとめ、16年度の施行を目指すという。(2003/9/17)

 

<4>

1.『福島民報』2003年11月5日付「青健条例にネット規制 民間にも協力要請 県の改正案」という記事によると、4日に開催された福島県青少年問題協議会で明らかにされた県青少年健全育成条例改定案には、学校や図書館、インターネットカフェなどの管理者に対し、フィルタリングソフトを組み込むなど、青少年保護に配慮することを求める努力義務が盛り込まれているという。県は12月末に答申を受け、来年2月の県議会に改定案を提出、16年度の施行を目指すという。(2003/11/6)

 

2.『福島民報』は2003年9月25日、「県青健条例改正 インターネット論議を」という論説を掲載している。この論説では、福島県青少年問題協議会で審議している県青少年健全育成条例改定案について、「協議会に先ごろ示された改正案には多メディアの中でも主流のインターネットの有害情報への規制が盛り込まれていない」などと指摘。条例を改定する際には、インターネット規制について議論すべきだと主張していた。(2003/11/6)

 

<5>

 福島県は「県青少年健全育成条例」の一部改定案について意見を募集している。改定案の概要には、区分陳列の方法を規則で定めることや、自販機規制の強化、学校やインターネットカフェなどにフィルタリングソフトを活用するよう求める努力義務などが盛り込まれている。募集期間は平成15年12月5日(金)~平成16年1月5日(月)。意見は住所、氏名、電話番号を記入し、郵便、ファクス、電子メールいずれかの方法により提出する。提出先や改定案の概要は次のページで確認することができる。(2003/12/10)

▼「「福島県青少年健全育成条例の一部改正」についてご意見を募集します。」

http://www.pref.fukushima.jp/youth/ikenbosyuHP/ikenbosyu.htmp

 

<6>

1.『福島民報』に2003年12月25日付で掲載された「発信業者に努力規定 ネット上の有害情報制限 条例一部改正で最終答申 県青少年問題協議会」という記事によると、福島県青少年問題協議会は24日、青少年健全育成条例を改定することについての最終答申をまとめ、県に提出したという。答申では、県内のプロバイダーなどの情報発信者側に自主的努力を求めているほか、「有害」図書の販売違反などに対する罰則を「20万円以下の罰金」から「6カ月以下の懲役または30円以下の罰金」にするよう求めているという。(2003/12/30)

 

2.福島県は2003年12月5日(金)~2004年1月5日(月)にかけて、「県青少年健全育成条例」の一部改定案について意見を募集している。この意見公募は、「県民等の意見等を県行政に反映させる手続」(「うつくしま県民意見公募(パブリック・コメント)の実施に関する要綱」第2条第1項)であるという。

 ただし、「「うつくしま県民意見公募(パブリック・コメント)の実施に関する要綱」の考え方」では、「県民等」の範囲を次のように制限している。

「「県民等」とは、県内に住所や事業所・事務所を有する個人や法人その他の団体のほか、県内の事業者や学校等に通勤・通学している方など、県内で何らかの社会的・経済的活動を営んでいる個人や法人その他の団体も含みます」

 また、「有害」規制監視隊が応募資格について問い合わせたところ、この条件に該当する場合は、意見を受付けるという回答があった。

 青少年条例についての意見公募は、これまで大阪府や秋田県などが行ってきた。さらに滋賀県は、2003年12月16日(火)~2004年1月15日(木)にかけて、青少年条例改定案について意見公募を行っている。これらの自治体では、「「県民等」の「等」とは、有識者、利害関係人その他意見および情報を提出する意思を有する者・団体等のことをいいます」(滋賀県民政策コメント制度に関する要綱(考え方))などの方針に基づき、住所等による応募資格の制限はない。福島県はどういった理由から、住所等による制限を行っているのだろうか?(2003/12/30)

▼「「うつくしま県民意見公募(パブリック・コメント)の実施に関する要綱」の考え方」

http://www.pref.fukushima.jp/bunken/f-stance/pcyoukoukanngae.htm

▼「「有害」規制法案・条例の状況 ■滋賀県「青少年の健全育成に関する条例」」

http://hp1.cyberstation.ne.jp/straycat/watch/data/kisei/shiga.htm

 

3.平成11年4月27日に閣議決定された「審議会等の整理合理化に関する基本的計画」では、審議会等の運営を改善するために、「審議会等の運営に関する指針」が定められた。この指針では、委員名簿や議事録の公開について次のように規定している。

(4)   公開
    1 審議会等の委員の氏名等については、あらかじめ又は事後速やかに公表する。
    2 会議又は議事録を速やかに公開することを原則とし、議事内容の透明性を確保する。なお、特段の理由により会議及び議事録を非公開とする場合には、その理由を明示するとともに、議事要旨を公開するものとする。
 ただし、行政処分、不服審査、試験等に関する事務を行う審議会等で、会議、議事録又は議事要旨を公開することにより当事者又は第三者の権利、利益や公共の利益を害するおそれがある場合は会議、議事録又は議事要旨の全部又は一部を非公開とすることができる。
    3 議事録及び議事要旨の公開に当たっては、所管府省において一般の閲覧、複写が可能な一括窓口を設けるとともに、一般のアクセスが可能なデータベースやコンピュータ・ネットワークへの掲載に努めるものとする。

 福島県では、県青少年問題協議会で青少年条例の改定について議論を重ねてきた。さらに、県青少年健全育成審議会では、「有害」図書の審査などを行っている。ところが、委員名簿や議事録等は、2003年12月現在、「一般のアクセスが可能なデータベースやコンピュータ・ネットワーク」には掲載されていない(議事録等の公開について「有害」規制監視隊が問い合わせたところ、閲覧するには情報公開請求が必要であるという)。

 東京都では、青少年問題協議会や青少年健全育成審議会の委員名簿、議事録等をホームページに掲載している。また、大阪府では青少年問題協議会の委員名簿や議事要旨をホームページに掲載している。

 福島県においても、情報公開請求の有無にかかわらず、委員名簿や議事録等を「一般のアクセスが可能なデータベースやコンピュータ・ネットワーク」に掲載するよう努めるべきではないだろうか。(2003/12/30)

▼青少年グループ

http://www.pref.fukushima.jp/youth/index.html

▼東京の青少年

http://www.seikatubunka.metro.tokyo.jp/index9.htm

▼大阪府子ども青少年課

http://www.pref.osaka.jp/koseishonen/index.html

 

<7>

 福島県議会平成16年2月定例会が2月19日、開会した。定例会には、知事提出議案として「福島県青少年健全育成条例の一部を改正する条例」が提出されている。改定案は、3月19日の本会議で可決される見通し。(2004/2/22)

 

<8>

1.福島県は2004年2月25日、「福島県青少年健全育成条例の一部改正についての県民からの意見公募(パブリック・コメント)実施結果について」を公表した。「福島県青少年健全育成条例の一部改正案」に対しては、8件(延べ20件)の意見が寄せられたという。(2004/2/26)

▼「福島県青少年健全育成条例の一部改正についての県民からの意見公募(パブリック・コメント)実施結果について」

http://www.pref.fukushima.jp/youth/ikenkeka.htm

 

2.福島県は、大阪府や滋賀県などと異なり、意見公募の応募資格に制限を設けていた。また、大阪府や東京都と異なり、意見公募のさい、福島県青少年問題協議会の議事録(議事要旨)や答申をインターネットで公開していなかった。

 政治権力と情報の関係については、次のような指摘がある。「政治権力による世論の形成と操縦は、具体的には情報の小出し、不利な情報の秘匿、有利な情報の誇大化、独善的・恣意的解釈の押しつけ、専門家による権威づけ、観測気球的発言、取材制限等々の手練手管が駆使される」(飯田良明「政治と情報」前納弘武、美ノ谷和成編著『情報社会の現在』、1998年、160頁)。

 福島県は、応募資格を制限したり、関連資料の入手を困難にすることで、「世論の形成と操縦」を意図していた可能性がある。(2004/2/26)

 

<9>

 福島県議会は3月19日、知事提出議案として提出されていた「福島県青少年健全育成条例の一部を改正する条例」を原案通り可決した。(2004/3/23)

 

<10>

 2004年3月26日の『福島県報』号外第20号で公布された「福島県青少年健全育成条例の一部を改正する条例」および号外第21号で公布された「福島県青少年健全育成条例施行規則の一部を改正する規則」の内容は、次のページで確認することができる。(2004/4/14 00:50)

▼「福島県青少年育成条例等の一部改正内容について」

http://www.pref.fukushima.jp/youth/ikenbosyuHP/ikenbosyu.htm

 

【関連報道】

(1)『福島民報』2003年9月1日「青少年性犯罪増加に歯止め 県健全育成条例を厳罰化 目立つ甘さ改善 違反行為や有害図書販売 罰金引き上げ 来年度にも施行」

(2)『福島民報』2003年9月6日「県青少年育成条例の厳罰化 県青少年問題協議会 県の方針了承」

(3)『福島民友』2003年9月6日「罰則強化 有害図書違反 わいせつ行為 健全育成条例改正へ 県が5年ぶり」

(4)『福島民報』2003年9月25日「論説 県青健条例改正 インターネット論議を」

(5)『福島民報』2003年11月5日「青健条例にネット規制 民間にも協力要請 県の改正案」

(6)『福島民友』2003年11月5日「健全育成条例の改正について諮問 県が青少年問題協に」

(7)『福島民報』2003年11月18日「論説 有害ネット規制への期待」

(8)『福島民報』2003年12月25日「発信業者に努力規定 ネット上の有害情報制限 条例一部改正で最終答申 県青少年問題協議会」

(9)『福島民友』2003年12月25日「性行為違反の罰則強化 県青少年健全育成条例 協議会が改正案答申」

(10)『河北新報』2004年1月20日「有害サイト 青少年の閲覧規制 福島県、育成条例改正へ」


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