青少年条例をめぐる動き(4)

2001年

2002年

2003年

2004年前半

1月6日

 『毎日新聞』に「書店+出版社+自治体+作家 万引き防止へタッグ 古書買い取り規制 警察と連携しキャンペーン」という記事が掲載される。

 

1月9日

 大阪府は青少年のメディアの利用実態などを調査した「青少年メディア環境調査報告書」を発表。

青少年メディア環境調査結果について

http://www.pref.osaka.jp/fumin/html/01879.html

【関連情報】

 東京都生活文化局都民協働部青少年課が2002年にまとめた『青少年をとりまくメディア環境調査報告書』では、都が実施した(1)青少年とその保護者に対するアンケート調査、(2)青少年、学校、メディア関連団体に対するインタビュー調査、(3)文献資料などがまとめられている。アンケート調査からは、青少年とメディアの関係のほか、保護者がメディアの悪影響についてどのように感じているか、メディアリテラシーについてどう考えているかなどを知ることができる。国内外の行政、メディア、学校などが行っているメディアに関する取り組みもまとめられている。報告書は書店などで購入することができる。

 

1月10日

1.『読売新聞』に「18歳未満の深夜立ち入り禁止 漫画喫茶など追加指定 都条例改正へ」という記事が掲載される。『日刊スポーツ』にも「東京都がブルセラ規制へ 下着買い取り、青少年条例で答申案」という記事が掲載された。

 

2.『朝日新聞』に「孤独 殺人に走る心の奥底」(連載「にっぽんの安全」第9回)という記事が掲載される。記事には、「犯罪本やビデオに影響を受け、醸成される無自覚な『殺人』への欲動」などの表現があるほか、諸沢英道・常磐大学教授(被害者学)の「孤独さで、本などの影響が抑えられなくなり、自分を見失う」というコメントがあるなど、殺人事件の動機と犯罪に関する本を結びつける内容となっている。

【関連情報】

 犯罪社会学とメディア論が専門の村上直之は『アウトサイダーズ ラベリング理論とはなにか』(ハワードS.ベッカー著、村上直之訳、1978年)の解説で、「異常」な行動や事件とその「動機」の関係をラベリング理論の観点から説明している。この説明によると、人々は日常、他者の行為の「動機」を問題とせず、その行為の意味を自動的に理解しているが、「異常」な行動や事件が起きると意味の理解が困難となり、「私たちは『異常』な行為者の『動機』を理解しようとする」(263頁)という。そして、この「『異常』な行為者の『動機』」の理解には、次のような機能があるという。

ベッカーが「逸脱動機が逸脱行動を導くのではなく、まったく逆なのだ」(本訳書六〇頁)と述べ、また彼と同様にエリクソン、J・I・キッセらが、「逸脱は行為の内在的性質ではなく、社会の聴衆によって付与された性質である」と語る時、彼らは、行為者の「内的属性」と見做されている「動機」が、他者(あるいは自分自身)の行為を説明し理解可能なものにするために仕組まれた一つの概念装置だということを明らかにしているのである。つまり「動機」は行為者の内部に発見されるのではなく、外部から「付与」されるのであり、この「動機付与」によって、わけのわからぬ行動や出来事の「異常」さをその行為者自身の「内的問題」として処理し、私たちの認知的秩序の均衡を回復するのである。(264-265頁)

 一般的に「動機」とは、行為に先立つものと考えられている。しかし、そうではなく、事後に「他者(あるいは自分自身)」がその行為を解釈した結果だというのである。この考えを踏まえて朝日新聞の記事を読むと、殺人事件を理解可能なものとし、「私たちの認知的秩序の均衡を回復する」ためにこそ、犯罪本やビデオの「影響」という「動機」が事後的に「付与」されたといえそうである。

 「犯罪本やビデオ」を規制すれば、「犯罪本やビデオに影響を受け」といった「動機」は語られなくなるかもしれない。だがそれは、同種の事件が減ったことを意味するのだろうか。同じような事件に今度は別の「動機」が「付与」されるだけではないだろうか。

 

1月13日

1.東京都ホームページに「第25期東京都青少年問題協議会第3回総会の開催について」が掲載される。

第25期東京都青少年問題協議会第3回総会の開催について

http://www.metro.tokyo.jp/INET/KONDAN/2004/01/40e1d100.htm

 

2.『大阪日日新聞』20面に「中学生の7割ネット経験 有害情報選別 保護者の意識低く 府メディア調査」という記事が掲載される。

 

3.『毎日新聞』(夕刊)に「「わいせつ漫画」有罪 「過激な性表現」 出版社社長に猶予刑 東京地裁判決」という記事が掲載される。また、「性表現過激化に警鐘 わいせつ有罪判決 漫画の特性重視」という解説記事によると、大阪府の「有害」図書指定担当者は、この判決に対し「問題があると思われる漫画について、その都度、警察との協議が必要だという議論も出てくるだろう」と述べたという。『朝日新聞』(夕刊)には「漫画に「わいせつ性」認定 出版社長有罪判決 「文書より刺激可能」 東京地裁」、『読売新聞』(夕刊)には「わいせつ漫画 出版元有罪 初の司法判断 「芸術・思想的要素ない」」、『日本経済新聞』(夕刊)には「「わいせつ」漫画有罪判決 東京地裁で初判断 「写真より刺激的」」、『東京新聞』(夕刊)には「漫画で初「わいせつ」判断 出版社社長に有罪 『悪影響軽視できず』 東京地裁」という記事が掲載された。

 

1月15日

 『毎日新聞』(夕刊)1面に「小中学生の夜中連れ歩き 「ブルセラ」衣服買い取り カラオケBOX深夜入店 都が罰則付き禁止 条例強化案、提出へ」という記事が掲載される。

 

1月17日

 『朝日新聞』(夕刊)に「アダルトビデオ自販機 年齢識別装置 都、義務化へ」という記事が掲載される。

 

1月19日

1.東京都は「第25期東京都青少年問題協議会答申及び都民意見の募集について」を発表。

第25期東京都青少年問題協議会答申及び都民意見の募集について

http://www.metro.tokyo.jp/INET/KONDAN/2004/01/40e1j400.htm

 

2.『東京新聞』(夕刊)に「「子どもは深夜外出ダメ」 親に努力義務 都の青少年条例改正案」という記事が掲載される。『日本経済新聞』(夕刊)には「漫画喫茶 深夜利用ダメ 盗んだ本売らせない 都の青少年条例で答申」という記事が掲載された。

 この他、NHK「首都圏ネット」や「ニュース7」、テレビ朝日「Jチャンネル」、日本テレビ「ニュースプラス1」なども、東京都青少年問題協議会の答申について報じた。

都青少年育成条例改正で答申

http://www3.nhk.or.jp/news/2004/01/20/k20040119000063.html

 

1月20日

1.『朝日新聞』(東京版)に「不健全図書販売を規制/深夜連れ出し禁止 青少年条例改正へ答申 都協議会」という記事が掲載される。『毎日新聞』(東京版)には「警察に「立ち入り調査権」 都条例改正の答申に盛る 都青少年問題協」、『読売新聞』(東京版)には「不健全図書は包装して陳列を 販売店に義務付け 都青少年問題協議会答申」、『産経新聞』には「都の青少年育成条例改正案 カラオケBOX深夜の入店禁止 協議会答申 成人図書には包装」という記事が掲載された。

 この他、テレビ朝日「やじうまプラス」なども都青少年問題協議会の答申について報じた。

【関連リンク】

東京の青少年

http://www.seikatubunka.metro.tokyo.jp/index9.htm

※都青少年問題協議会の答申や議事録(起草委員会を除く)をダウンロードすることができる。

 

2.『河北新報』1面に「有害サイト 青少年の閲覧規制 福島県、育成条例改正へ」という記事が掲載される。

 

3.『新聞協会報』に「漫画本で初の「わいせつ」認定 東京地裁 出版社社長に有罪判決」という記事が掲載される。

 

1月21日

 『全国書店新聞』に「帯紙措置決め通知」という記事が掲載される。記事によると、出版倫理協議会はコアマガジンに対し、2003年12月の東京都青少年健全育成審議会で連続3回「不健全」図書指定を受けた雑誌『お宝ワイドショー』について、次回搬入分より帯紙措置をとることを通知したという。

【関連リンク】

宝島社裁判と帯紙措置

出版倫理協議会による流通規制

 

1月22日

 『新文化』に「不健全図書 小売店に包装を義務化 都青少年問題協議会 答申案を提出 条例改正へ 罰則は盛り込まず」という記事が掲載される。

 

1月23日

 『都政新報』1面に「都青少年健全育成条例改正で答申 指定図書の包装義務づけ 漫画喫茶・ネットカフェ 深夜立ち入りを制限」という記事が掲載される。なお、記事に付された解説では「規制強化だけが突出することなく、他方で公平・適正を担保するための仕組みづくりが不可欠であり、こうした対応が条例改正全体を通じて求められる」と指摘している。

 

1月27日

 『新聞協会報』に「青少年健全育成条例改正案を議会提出へ 東京都」という記事が掲載される。

 

2月6日

1.『神奈川新聞』に「青少年の深夜外出防止へ「ケア」 横浜市が検討 新たな議論に」という記事が掲載される。

2.『日本経済新聞』に「未成年の犯罪被害深刻 連れ去り・わいせつ最多 昨年虐待死42人に増加」という記事が掲載される。ほかにも「少年、加害も深刻 凶悪犯11%増 14歳未満、16年ぶり200人越す」という記事が掲載された。『朝日新聞』には「凶悪少年事件 検挙者1割増 03年、警察庁まとめ」、『毎日新聞』には「03年、性犯罪の少年被害 過去最悪の7376件 警察庁まとめ」、『読売新聞』には「殺人、強盗…凶悪犯 少年摘発2212人 昨年」、『東京新聞』には「少年の凶悪犯1割増 強盗最悪、殺人16%増、放火17%増 被害も深刻、性犯罪最多 昨年、警察庁まとめ」という記事が掲載された。

 

2月8日

 『神奈川新聞』に「本が切り口 青少年対策 横浜市が04年度」という記事が掲載される。

 

2月9日

 朝日新聞ホームページに「風俗店へのスカウト行為、18歳未満禁止 都が条例案」という記事が掲載される。

風俗店へのスカウト行為、18歳未満禁止 都が条例案

http://www.asahi.com/national/update/0209/002.html

 

2月11日

1.『東京新聞』に「ブルセラ出品・風俗店勤務… 少女への勧誘禁止 都が全国初、条例改正案」という記事が掲載される。

 

2.『全国書店新聞』に「万引き防止ポスターの効果等アンケート調査 東京組合」という記事が掲載される。記事によると、東京都書店商業組合の副理事長は2月3日の定例理事会で、「包括指定見送りをお願いした以上、自主規制を徹底しなければならない」と述べたという。

 

2月12日

 『新文化』1面に橋本健午氏(ノンフィクション作家)の「「始めに規制ありき」か? 不健全図書「包装義務化」条例に異議」という記事が掲載される。記事では、出版倫理協議会が実効性の観点から包括指定の導入に反対したことを批判。包括指定の代わりに雑誌の包装が義務化されたこと、ほとんどの自治体が包括指定を導入したことで指定件数(全国)が大幅に減少したことなどを挙げ、「出倫協としては、困った顔を装いながら、しぶしぶ導入に“賛成”すればよかったのである」と主張している。

【関連リンク】

個別指定は包括指定よりも「理想的」なのか

規制強化を招いた規制反対運動

 

2月13日

 『都政新報』1面に「第1回定例都議会に157議案 住宅紛争防止条例、食品安全条例を新設」という記事が掲載される。東京都青少年健全育成条例改定案の概要が報じられている。

 

2月17日

1.『読売新聞』1面に「男は男らしく 女は女らしく 日本の高校生最低 日米中韓調査」という記事が掲載される。また、社会面に掲載された「男女・善悪の区別ちぐはぐ日本 高校生調査 親、学校"軽さ"反映?」という記事には、日本の高校生は他国に比べ、結婚前の純潔を重視していない、という調査結果に対し、大日向雅美・恵泉女学園大教授(心理学)の「メディアに性や暴力がはんらんし、日本の大人が命や性の大切さを若者に示していない現状が表れているのでは」というコメントが紹介されている。

「男らしさ・女らしさ」日本の高校生は意識希薄

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20040217it01.htm

 

2.『読売新聞』(夕刊)に「ネットの危険性 低い親の意識 PTA調査「有害サイト遮断」7割知らず」という記事が掲載される。

 

2月18日

1.東京都は平成16年第1回都議会定例会に提出する「条例案概要」を発表した。

条例案概要 平成16年第一回都議会定例会

http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2004/02/20e2i100.htm

 

2.『朝日新聞』に「東京都の健全育成条例 改定反対の署名2万5千人分に」という記事が掲載される。

【関連情報】

1.『朝日新聞』2003年12月18日朝刊「都の不健全図書規制強化 マンガ家・学者らが反対」という記事は、この署名運動について「1点1点の内容を基準に照らし合わせて指定する現行の『個別指定』ではなく、性描写などが一定以上の割合を占めると自動的に指定する『包括指定』や、審議を経ずに都職員が指定する『緊急指定』が浮上していることを問題視している」と報じている。ところが、12月の段階では、改定案の具体的内容はおろか、改定案の基礎となる青少年問題協議会の答申さえまとまっていなかった。

 実際、東京都青少年問題協議会が2004年1月19日に都へ提出した答申にも、2月18日に都が発表した「東京都青少年の健全な育成に関する条例の一部を改正する条例」にも、「包括指定」や「緊急指定」は盛り込まれなかった。内容が不明確な段階から“反対ありき”の署名を集めるのではなく、せめて答申が明らかとなる1月19日まで待つという、“慎重さ”が必要だったのではないだろうか。

【関連リンク】

個別指定は包括指定よりも「理想的」なのか

規制強化を招いた規制反対運動

 

2.朝日新聞の津山昭英・東京本社編集局記事審査部長(当時)は、過去に「不健全(有害)」図書の審査などを行う東京都青少年健全育成審議会で委員を務めていた。津山氏が委員であった当時、朝日新聞は2001年1月25日に「有害情報規制 どういう結果を招くか」という社説を掲載している。この社説では、自民党「青少年社会環境対策基本法案」について、「メディアを政府や行政の監視下に置く」、「メディアリテラシーの能力を育てることが大事だ」などと批判している。ところが、2001年3月に改定・強化が予定されていた東京都青少年健全育成条例については一言も触れていない。なお、この時の条例改定では、「不健全(有害)」図書の指定事由に「自殺」や「犯罪」が追加されたほか、区分陳列の義務化などが行われた。

 

3.メディア関係者が政府や自治体の審議会に参加することは、ジャーナリスト倫理に反するという批判がある。例えば、朝日新聞紙面審議会の渡辺正太郎委員は、『朝日新聞』2003年10月10日「変わる政治 深い視点で 朝日新聞紙面審議会 03年度第3回」という記事で次のように述べている。

「既存の体制と距離を置き批判することも新聞社の大きな役割のひとつである。例えば、政府の審議会に新聞社が入って政策提言に参画すると、自らそれに縛られ、政府の先棒を担ぐ結果になる。慎重な対応が必要だ」

 この意見に対し、吉田慎一・東京本社編集局長は「政府の審議会への記者の参加について、朝日新聞は、抑制的に考えるのを原則にしている。参加要請があった場合は、数人の委員会で参加が適当かどうか検討して判断している。場合によっては報道の公平・公正、不偏不党の根幹にかかわりかねないからだ」と答えている(なお、この時の紙面審議会の司会は津山昭英・編集担当補佐だったという)。

 津山氏は「有害情報規制」を扱う東京都青少年健全育成審議会の委員であったが、朝日新聞の委員会はどういう議論をへて「参加が適当」と判断したのだろうか。また、「報道の公平・公正、不偏不党」を重視するのであれば、委員ではなく、あくまでも取材者の立場で審議会にかかわるべきではないだろうか。

 メディア関係者が審議会に参加することは、メディアが「政府の先棒を担ぐ」以外にも、様々な弊害が考えられる。メディアに依存する記者や文化人、さらにはメディアを敵に回したくない人々が審議会問題について書けるのだろうか? メディア関係者の審議会参加は「報道の公平・公正、不偏不党」という枠を越えて、市民の「知る権利」を脅かしている可能性がある。

 

4.メディアと審議会の関係については、以下の文献が詳しい。

(1)天野勝文「「取り込まれる」ジャーナリスト」『総合ジャーナリズム研究』第128号(1989年) 46-52頁

(2)天野勝文「「取り込まれる」マスコミ人 全国版」『総合ジャーナリズム研究』第144号(1993年) 72-79頁

(3)天野勝文「政府審議会は記者のウバ捨て山か 記者クラブ同様これも一つの癒着ではないか」『文芸春秋』1993年11月号 296-303頁

(4)天野勝文「新聞人の各種審議会への参加について」新聞労連編『新聞記者を考える』(晩聲社、1994年) 187-211頁

 

『読売新聞』(夕刊)に「少女下着買い取り 街頭スカウト禁止 都25日提出 条例案」という記事が掲載される。

『日本経済新聞』(夕刊)にも「予算案など176件 都が議会提出へ」という記事が掲載された。

2月19日

 『毎日新聞』(東京版)に「都議会が25日開会 予算、青少年条例など審議」という記事が掲載される。

『読売新聞』(東京版)にも「「敷金トラブル」に新条例 都、議会に提案へ 一般会計予算5兆7000億」という記事が掲載された。

『朝日新聞』(東京版)にも「都議会 第1回定例会は25日召集」という記事が掲載された。

『日刊スポーツ』にも「ブルセラ全滅へ都が全国初条例化 下着売買もうバイバイ」という記事が掲載された。

2月20日

 毎日新聞ホームページに「外国人組織犯罪や少年問題で連携--首都圏4副知事治安対策会議」という記事が掲載される。

▼「外国人組織犯罪や少年問題で連携--首都圏4副知事治安対策会議」

http://www.mainichi.co.jp/area/saitama/news/20040220k0000c011004000c.html

『読売新聞』(神奈川版)にも「4都県の副知事が治安対策で初会合」という記事が掲載された。

『埼玉新聞』にも「治安対策の連携 1都3県で強化 副知事が初会合」という記事が掲載された。

2月21日

 『神奈川新聞』に「横浜市が計画骨子まとめ 総合的な青少年育成を 8項目22事業を重要事項に」という記事が掲載される。

『読売新聞』(横浜版)30面に「有害ビデオ自販機の場所提供で書類送検」という記事が掲載される。記事によると、保土ヶ谷署は20日、県青少年保護育成条例違反ほう助の容疑で自販機の設置場所提供者を書類送検したほか、自販機業者についても同条例違反容疑で書類送検したという。

2月23日

 『読売新聞』の「子どもの心」欄に「気を付けたい「性情報」 小学校で」という記事が掲載される。

2月24日

 『東京新聞』に「家庭に広がるポルノ被害 弁護士らの研究会が実態調査 夫・恋人・父親から 強制的に「見せる」「まねさせる」」という記事が掲載される。

2月26日

 『新文化』に「不健全図書の自主規制求める FC協会」という記事が掲載される。

2月27日

 『都政新報』に「多角的・複合的な審議を 第1回都議会定例会開会」という社説が掲載される。青少年条例改定案については、「(大人が子どもを守る環境を整備するという)大義名分と、条例で強権的に規制を強化することとは、きちんと整理しなければならない」と主張している。

『東京新聞』(横浜版)に「有害図書 販売防止策で専門委 青少年対策で市 深夜外出でもケア」という記事が掲載される。

3月2日

 『毎日新聞』(夕刊)に「映倫のボカシ問題を考える」という記事が掲載される。
【関連情報】
 海外で行われている映像倫理規制については、以下の文献が詳しい。

(1)大條成昭「映像倫理規制の各国事情」『総合ジャーナリズム研究』第141号(1992年) 54-59頁

(2)小平さち子「テレビにおける暴力描写をめぐる各国の動向」『放送研究と調査』1994年1月号 22-31頁

(3)清水英夫・大條成昭「映像における暴力表現の問題性 映像表現の基準に関する第四回国際会議から」『総合ジャーナリズム研究』第159号(1997年) 39-44頁

(4)向後英紀「アメリカにおける番組ランクづけシステムと"V-Chip"の導入 ~性・暴力番組からの青少年の保護(1)~」『放送研究と調査』1997年5月号 2-11頁

(5)森口 宏、伊藤恭子「アジア地域における衛星放送と青少年の保護 ~性・暴力番組からの青少年の保護(3)~」『放送研究と調査』1997年7月号 38-45頁

(6)村瀬真文「ヨーロッパ国際機関の青少年保護法制 ~EU(欧州連合),欧州評議会,EBUの原則の背景をさぐる~」『放送研究と調査』1997年6月号 68-77頁

(7)総務庁青少年対策本部『諸外国における青少年施策等に関する調査研究報告書 -有害環境、幼児虐待及び児童買春からの青少年保護を中心に-』(1998年)

(8)古城ゆかり「テレビの暴力描写はどこまで許されるのか ~カナダの先駆的試み~」『放送研究と調査』1998年12月号 22-29頁

3月4日

 『北日本新聞』25面に「有害図書販売店 9・5ポイント減少 県のコンビニ調査」という記事が掲載される。

3月5日

 『北海道新聞』(夕刊)16面に「カラス族規制 条例改正検討 道、道警と実態調査へ」という記事が掲載される。

『都政新報』1面に「規制強化で各会派の姿勢明確に」という記事が掲載される。青少年条例改定案に対する自民、民主、公明、生活者ネットの質問内容や石原知事の答弁について報じている。

3月7日

 『東京新聞』(東京版)に「高校生らも議論 万引防止シンポ 関係者ら450人出席」という記事が掲載される。

『読売新聞』の「編集委員が読む」欄に、「脳の発育のために テレビよりも人と触れ合って」という記事が掲載される。

3月9日

 『都政新報』の「視点」欄に「議会の季節 骨太の議論を期待する」という記事が掲載される。東京都青少年健全育成条例改定案については、青少年の行動に極力自由を認めてきた従来の考え方から、「「治安」「社会秩序」のためには一定の制限を加える方向へと対応方針を大きく転換する」ものだと指摘。「議論を尽くして欲しい」と訴えている。

3月16日

 『都政新報』に「健全育成条例 規制強化の考え方説明 安全・安心アカデミー創設 都議会予特委」という記事が掲載される。

『毎日新聞』に下村昭夫氏(本の未来を考える「出版メディアパル」編集長)の「出版ウォッチング 書店販売の「マニフェスト」」というコラムが掲載される。41年ぶりに全面改正された日本書店商業組合連合会の「出版販売倫理綱領」では、「出版物の販売にあたり青少年の健全育成に配慮する」ことが宣言されているという。

3月18日

 『毎日新聞』(東京版)に「万引き「問題ない」2割 都「重大性を社会に喚起」 中高生アンケ」という記事が掲載される。

読売新聞』(夕刊)に「「ビデオ見て殺人願望」 検察指摘 伊田被告は殺意否認 連続通り魔」という記事が掲載される。

3月21日

 『上毛新聞』23面に「撤去や設置地区の制限 条例見直し検討へ 近く審議会に諮問 有害図書自販機で県」という記事が掲載される。記事によると、群馬県は県青少年保護育成条例を改定し、自販機での「有害」図書の販売規制を強化することについて、近く県青少年保護育成審議会に諮問する考えだという。

3月23日

 『都政新報』1面に「都議会常任委員会 全条例案を可決」という記事が掲載される。
『日刊スポーツ』にも「都健全育成条例文教委で可決 漫画喫茶× カラオケボックス× ネットカフェ× 7月1日から18歳未満深夜立ち入り」という記事が掲載された。
『しんぶん赤旗』にも「青少年育成条例は再検討を」という記事が掲載された。

3月24日

 『読売新聞』に「子どもの門限定めるべき?」という特集記事が掲載される。記事によると、読売新聞が子どもの深夜外出を条例で規制することについて意見を募集したところ、約80通の投稿があり、賛成53%、反対26%、その他21%だったという。

3月29日

 『日本経済新聞』(夕刊)に「警察に調査権 犯罪抑止期待 未成年の夜遊び規制 都が来月から 漫画喫茶やカラオケ店 対応に揺れる」という記事が掲載される。都議会で30日に可決される見通しの東京都青少年健全育成条例改定案には、カラオケボックスや漫画喫茶、インターネットカフェを深夜(午後11時から翌日午前4時まで)立ち入り制限施設に追加することが盛り込まれていることから、青少年の深夜入店をめぐる事業者の取り組み状況などが報じられている。

【関連情報】

 「東京都青少年の健全な育成に関する条例の一部を改正する条例」が3月30日の本会議で原案通り可決された場合、新たに施行される「東京都青少年の健全な育成に関する条例」は次のページで確認できる。

▼「生活文化局が改定案を説明 文教委員会」

http://hp1.cyberstation.ne.jp/straycat/watch/news/archive/2004/26.htm

『読売新聞』(夕刊)に「シブヤのクラブ 18じゃないと入れない 保険証の年齢変造 少女13人摘発」という記事が掲載される。

『毎日新聞』(夕刊)にも「「クラブ」入店に保険証変造 渋谷 容疑の17歳少女逮捕」という記事が掲載された。
『東京新聞』(夕刊)にも「渋谷のクラブ入りたい 年齢偽るため保険証変造容疑 17歳少女を逮捕」という記事が掲載された。

3月30日

 東京都議会は平成16年第1回都議会定例会に提出されていた「東京都青少年の健全な育成に関する条例の一部を改正する条例」を賛成多数で原案通り可決した。都議会議員122名のうち自民党(52名)、民主党(23名)、公明党(21名)などが改定案に賛成し、共産党(15名)などが反対した。新たに施行される「東京都青少年の健全な育成に関する条例」は次のページで確認できる。
▼「生活文化局が改定案を説明 文教委員会」

http://hp1.cyberstation.ne.jp/straycat/watch/news/archive/2004/26.htm

3月31日

 『東京都公報』で、30日の本会議で可決・成立した「東京都青少年の健全な育成に関する条例の一部を改正する条例」が公布される。

『毎日新聞』(東京版)に「都議会閉会 新銀行にGO 改正青少年育成条例など成立」という記事が掲載される。
『東京新聞』(東京版)にも「新銀行の設立決定 一般会計予算案など142議案可決し閉会 都議会」という記事が掲載された。
『朝日新聞』(東京版)にも「予算案など150議案可決 都議会終わる」という記事が掲載された。
『読売新聞』(東京版)にも「「新銀行東京」設立予算案を可決 都議会」という記事が掲載された。
【関連情報】
1.「不健全」指定の適否などを審査する東京都青少年健全育成審議会(東京都青少年健全育成条例に基づき設置)には、新聞社から3人の委員が選ばれている。ここ数年で委員を務めた新聞関係者には次のような人々がいる(肩書きは当時のもの)。
津山昭英・朝日新聞東京本社編集局記事審査部長
瀬戸純一・毎日新聞東京本社論説委員
楢崎憲二・読売新聞社論説委員
庄司 正・東京新聞編集局文化部長
徳永文一・読売新聞東京本社論説委員
 なお、東京都青少年健全育成審議会の委員名簿や近年開催された審議会の議事録等は次のページで確認することができる。
▼「審議会等」

http://www.seikatubunka.metro.tokyo.jp/index9files/singi.htm

2.メディア関係者の審議会参加には様々な批判がある。例えば、朝日新聞紙面審議会の渡辺正太郎委員は、『朝日新聞』2003年10月10日「変わる政治 深い視点で 朝日新聞紙面審議会 03年度第3回」という記事で次のように述べている。

「既存の体制と距離を置き批判することも新聞社の大きな役割のひとつである。例えば、政府の審議会に新聞社が入って政策提言に参画すると、自らそれに縛られ、政府の先棒を担ぐ結果になる。慎重な対応が必要だ」

 この意見に対し、吉田慎一・東京本社編集局長は「政府の審議会への記者の参加について、朝日新聞は、抑制的に考えるのを原則にしている。参加要請があった場合は、数人の委員会で参加が適当かどうか検討して判断している。場合によっては報道の公平・公正、不偏不党の根幹にかかわりかねないからだ」と答えている(なお、この時の紙面審議会の司会は津山昭英・編集担当補佐だったという)。
 メディア関係者が委員として審議会に参加することは、「政府の先棒を担ぐ」以外にも、様々な弊害が考えられる。メディアに依存する記者や文化人、さらにはメディアを敵に回したくない人々が審議会問題について書けるのだろうか? メディア関係者の審議会参加は「報道の公平・公正、不偏不党」という枠を越えて、市民の「知る権利」を脅かしている可能性がある。

3.メディアと審議会の関係については、以下の文献が詳しい。

(1)天野勝文「「取り込まれる」ジャーナリスト」『総合ジャーナリズム研究』第128号(1989年) 46-52頁

(2)天野勝文「「取り込まれる」マスコミ人 全国版」『総合ジャーナリズム研究』第144号(1993年) 72-79頁

(3)天野勝文「政府審議会は記者のウバ捨て山か 記者クラブ同様これも一つの癒着ではないか」『文芸春秋』1993年11月号 296-303頁

(4)天野勝文「新聞人の各種審議会への参加について」新聞労連編『新聞記者を考える』(晩聲社、1994年) 187-211頁

4.「有害」規制監視隊は2004年2月2日に東京都へ提出した意見「「公平・適正」な体制を、東京都が責任を持ってつくるために ―審議会の運営改善策等について―」で、個別指定の適否を判断する東京都青少年健全育成審議会の運営改善を主張している。

▼「「公平・適正」な体制を、東京都が責任を持ってつくるために ―審議会の運営改善策等について―」

http://hp1.cyberstation.ne.jp/straycat/watch/opinion/08.htm

4月1日

 『日本経済新聞』(夕刊)に「カラオケ店で1万8000人補導 昨年最多、高校生が6割 警察庁初公表」という記事が掲載される。『朝日新聞』(夕刊)には「カラオケボックス補導最多 警察庁昨年まとめ」、『東京新聞』(夕刊)には「過去最多 1万8000人超す カラオケボックスでの補導 少年非行の温床に 警察庁昨年まとめ」という記事が掲載された。

【関連情報】

 カラオケボックスや漫画喫茶、インターネットカフェを深夜立ち入り制限施設に追加することなどを盛り込んだ「東京都青少年の健全な育成に関する条例の一部を改正する条例」が2004年3月30日、東京都議会で可決されている。規制の内容は、深夜(午後11時から翌日午前4時までの時間)にこれらの施設へ青少年(18歳未満の者)を立ち入らせた業者に対し、30万円以下の罰金を課すというもの。7月1日から施行される。新たに施行される「東京都青少年の健全な育成に関する条例」は次のページで確認できる。

▼「生活文化局が改定案を説明 文教委員会」

http://hp1.cyberstation.ne.jp/straycat/watch/news/archive/2004/26.htm

4月3日

 『東京新聞』(夕刊)に「「出会い系」被害続出 小学生を守れ ネットの暗部教科書で警告 来年4月から登場」という記事が掲載される。

【関連情報】

『新聞協会報』は「教科書にみるメディア」という記事を連載している。第1回(2004年1月27日)は、公民の教科書におけるメディアに関する記述を、第2回(2004年2月3日)は、国語の教科書におけるメディア評論を、第3回(2004年2月10日)は、教科書の記述に対する新聞関係者の意見を特集している。

4月7日

 『東京新聞』に「暴力に負けない 教育現場に広がるCAP」という特集記事が掲載される。記事によると、具体的な場面を想定したロールプレイなどを通し、子どもが暴力から身を守る方法を学ぶ学習プログラム・CAP(チャイルド・アソールト・プリベンション)が、自治体や学校に広まりつつあるという。この他、「米の子供の肥満、メディアが原因!? 食品CMやり玉 議会、規制に及び腰」という記事も掲載されている。

4月8日

 『読売新聞』に「「治安悪化」94% 「警察信頼」65% 過去最悪 本社世論調査」という記事が掲載される。読売新聞社が3月20日と21日に行った治安に関する世論調査によると、「未成年者による犯罪が増加していますが、次の中から、あなたがその原因だと思うものを、いくつでもあげて下さい」という質問には、「しつけなど家庭の教育力の低下」を選ぶ者が76.1%と最も多く、以下「手本となるべき大人のモラルの低下」61.3%、「犯罪を誘発するインターネットや携帯電話サイトの増加」50.0%、「暴力シーンを強調したテレビ番組やゲーム、出版物の増加」47.2%などが続いているという。

4月9日

1.『神奈川新聞』に「横浜市が「青少年プラン」素案 有害図書販売防止策など重点に」という記事が掲載される。『朝日新聞』(横浜版)には「青少年プラン 市長の提案、検討へ 深夜外出や有害図書 検討委設置、素案に」、『読売新聞』(横浜版)には「青少年健全育成 市プランの素案」という記事が掲載された。

▼「横浜市初の青少年プラン(素案)発表!」

http://www.city.yokohama.jp/me/shimin/seishonen/plansoann.html

▼「横浜市青少年プラン(素案)に対するあなたのご意見をお寄せください!」

http://www.city.yokohama.jp/me/shimin/seishonen/ikenbosyuu.html

2.『毎日新聞』(神奈川版)に「誕生から2年 中田・横浜市長に聞く」という中田 宏・横浜市長へのインタビューが掲載される。

4月11日

 『全国書店新聞』1面に「有害図書に包装義務 販売店には区分陳列求む」という記事が掲載される。3月30日に改定された東京都青少年健全育成条例の概要を報じている。この他、「群馬県も条例改正 青少年から本の買受け禁止」という記事も掲載されている。

【関連リンク】

▼「有害」規制法案・条例の状況 東京都青少年の健全な育成に関する条例

http://hp1.cyberstation.ne.jp/straycat/watch/data/kisei/tokyo.htm

▼「有害」規制法案・条例の状況 群馬県青少年保護育成条例

http://hp1.cyberstation.ne.jp/straycat/watch/data/kisei/gunma.htm

4月13日

 『サンデー毎日』2004年4月25日号に「エロ・グロ規制で始まる「暗黒時代」の足音・・・」という記事が掲載される。

【関連情報】

1.この記事は、3月30日に改定された東京都青少年健全育成条例について報じているものの、個別指定と包括指定の違いや、帯紙措置(出版業界の自主規制)についてはほとんど説明していない。また、毎日新聞社の瀬戸純一論説委員が個別指定の適否を判断する東京都青少年健全育成審議会の会長代理であることや、瀬戸会長代理が2003年11月17日開催の第524回東京都青少年健全育成審議会で、「1ヵ所でも、あるいはちょっとでも、それこそ犯罪的なものがあれば、それは短くてもだめ」と指摘し、分量基準を満たさなければ指定されない包括指定を導入するより、分量に係りなく指定できる個別指定を強化すべきだと主張していたことは、一切触れていない。

2.東京都の個別指定は帯紙措置と連動している。このため東京都は、連続3回または1年で5回の指定を行うことで雑誌を休刊に追い込むことが可能である。

 一方、包括指定は、たとえ導入されていたとしても、「指定図書名が特定・公表されることがないため、帯紙措置による流通規制もない」(第524回東京都青少年健全育成審議会議事録より)。

3.東京都青少年問題協議会や東京都青少年健全育成審議会などでは、規制強化に賛成であるか反対であるかを問わず、包括指定に反対する意見が多く、最終的には包括指定の導入に代えて個別指定が強化されることとなった。

 一般的には、個別指定よりも包括指定の方が問題が多いといわれている。しかしながら、こうした意見は、東京都の個別指定は帯紙措置と連動していることや、個別指定は包括指定と異なり、(1)性表現に限らず、暴力や犯罪、さらには自殺に関する表現まで「不健全」指定できること、(2)写真や絵だけでなく、文章も指定の対象となること、(3)分量による基準がないため、「1ヵ所でも、あるいはちょっと」でも「不健全」であれば指定できてしまうこと――などを十分考慮したものではなかった可能性がある。

 条例改定に最も影響のある青少年問題協議会では、包括指定の是非は議論されたものの、個別指定の問題点や改善策、濫用防止策はほとんど議論されなかった。包括指定よりも厳しい個別指定強化案こそ、最も時間をかけて議論すべきだったのではないだろうか。

【関連リンク】

個別指定は包括指定よりも「理想的」なのか

規制強化を招いた規制反対運動

4.水野達雄青少年課長は、2004年1月15日開催の第526回東京都青少年健全育成審議会で、「指定図書の選定基準はあるが候補図書の基準はない。それを具体的にして、積極的に諮問をしていきたい」と述べている。個別指定は、1点1点審議会で審査を行うものの、包括指定の基準に至らない図書類でさえ、「不健全」指定できる制度である。諮問図書の増加は、指定図書の増加に直結する可能性が高い。

【関連リンク】

個別指定の強化に異論なし 第4回起草委員会(2004/1/13)

条例改定を答申 青少年問題協議会総会(2004/1/23)

諮問のあり方見直しへ 文教委員会(2004/3/20)

分量基準は是か非か 文教委員会(2004/3/23)

『朝日新聞』(夕刊)に「入店用の身分証DJが偽造容疑 歌舞伎町、少女に渡す」という記事が掲載された。『日本経済新聞』(夕刊)には「クラブ入店目的身分証明書偽造 警視庁、容疑者逮捕」、『東京新聞』(夕刊)には「身分証明書を偽造 入店不可の少女に渡す クラブDJを逮捕」という記事が掲載された。

4月17日

 『THE JAPAN TIMES』に「YOUNG GIRLS RECRUITED ON STREET  Soliciting for oldest trade with Shibuya-style spin」という記事が掲載される。3月30日に改定・強化された「東京都青少年の健全な育成に関する条例」に規定するスカウト規制の内容、スカウトマンの話などが紹介されている。

【関連情報】

 青少年に対し、性風俗店で働くよう勧誘することなどを禁じた「東京都青少年の健全な育成に関する条例」は次のページで確認できる。「青少年への勧誘行為の禁止」については、第15条の3参照。

▼「生活文化局が改定案を説明 文教委員会」

http://hp1.cyberstation.ne.jp/straycat/watch/news/archive/2004/26.htm

4月18日

 『THE JAPAN TIMES』に「Ishihara does about-face on smut, orders crackdown on magazines」という記事が掲載される。『サンデー毎日』2004年4月25日号に掲載された「エロ・グロ規制で始まる「暗黒時代」の足音・・・」の概要が紹介されている。

【関連情報】

1.『サンデー毎日』2004年4月25日号「エロ・グロ規制で始まる「暗黒時代」の足音・・・」は、「不健全」図書指定の仕組みや、その影響についての説明が不十分である。図書規制に疑問を投げかけておきながら、東京都の個別指定と連動した出版業界の自主規制(帯紙措置)や指定の適否を判断する東京都青少年健全育成審議会について説明していないのはなぜだろうか。

2.出版界の業界団体・出版倫理協議会(日本書籍出版協会、日本雑誌協会、日本出版取次協会、日本書店商業組合連合会の4団体で構成)には、東京都の「不健全」指定(個別指定)を連続3回または1年で5回受けた雑誌に対し、次の号から「18歳未満の方々には販売できません」という帯紙をつけるよう通知する自主規制(帯紙措置)がある。帯紙をつけない雑誌は取次で扱われず、たとえ帯紙がついていても書店から注文がない限り送品されない。この帯紙措置を適用されると、「流通部数が極端に減ってしまうために、休刊(実質的な廃刊)を余儀なくされてしまうのが通例」(長岡義幸「東京都「不健全」図書指定に宝島社の反撃」『創』2001年1-2月号、115頁)だという。なお、最近の例では、コアマガジン発行の雑誌『お宝ワイドショー』(隔月刊)が、2003年8月、10月、12月の東京都青少年健全育成審議会で連続3回「不健全」指定を受け、休刊している。

▼東京都「不健全」指定状況一覧

http://hp1.cyberstation.ne.jp/straycat/watch/data/jyourei/sitei/tokyo.htm

3.水野達雄青少年課長は、2004年1月15日開催の第526回東京都青少年健全育成審議会で、「指定図書の選定基準はあるが候補図書の基準はない。それを具体的にして、積極的に諮問をしていきたい」と述べている。

 個別指定は、1点1点審議会で審査を行うものの、「包括指定の基準に至らない図書類」でさえ、「不健全」指定できる制度である。諮問図書の増加は、指定図書の増加に直結する可能性が高い。

▼「諮問のあり方見直しへ 文教委員会」

http://hp1.cyberstation.ne.jp/straycat/watch/news/archive/2004/27.htm

4.「不健全」指定の適否などを審査する東京都青少年健全育成審議会(東京都青少年健全育成条例に基づき設置)には、新聞社から3人の委員が選ばれている。ここ数年で委員を務めた新聞関係者には次のような人々がいる(肩書きは当時のもの)。

津山昭英・朝日新聞東京本社編集局記事審査部長

瀬戸純一・毎日新聞東京本社論説委員

楢崎憲二・読売新聞社論説委員

庄司 正・東京新聞編集局文化部長

徳永文一・読売新聞東京本社論説委員

 なお、東京都青少年健全育成審議会の委員名簿や近年開催された審議会の議事録等は次のページで確認することができる。

▼「審議会等」

http://www.seikatubunka.metro.tokyo.jp/index9files/singi.htm

5.メディア関係者の審議会参加には様々な批判がある。例えば、朝日新聞紙面審議会の渡辺正太郎委員は、『朝日新聞』2003年10月10日「変わる政治 深い視点で 朝日新聞紙面審議会 03年度第3回」という記事で次のように述べている。

「既存の体制と距離を置き批判することも新聞社の大きな役割のひとつである。例えば、政府の審議会に新聞社が入って政策提言に参画すると、自らそれに縛られ、政府の先棒を担ぐ結果になる。慎重な対応が必要だ」

 この意見に対し、吉田慎一・東京本社編集局長は「政府の審議会への記者の参加について、朝日新聞は、抑制的に考えるのを原則にしている。参加要請があった場合は、数人の委員会で参加が適当かどうか検討して判断している。場合によっては報道の公平・公正、不偏不党の根幹にかかわりかねないからだ」と答えている(なお、この時の紙面審議会の司会は津山昭英・編集担当補佐だったという)。

 メディア関係者が委員として審議会に参加することは、「政府の先棒を担ぐ」以外にも、様々な弊害が考えられる。メディアに依存する記者や文化人、さらにはメディアを敵に回したくない人々が審議会問題について書けるのだろうか? メディア関係者の審議会参加は「報道の公平・公正、不偏不党」という枠を越えて、市民の「知る権利」を脅かしている可能性がある。

6.メディアと審議会の関係については、以下の文献が詳しい。

(1)天野勝文「「取り込まれる」ジャーナリスト」『総合ジャーナリズム研究』第128号(1989年) 46-52頁

(2)天野勝文「「取り込まれる」マスコミ人 全国版」『総合ジャーナリズム研究』第144号(1993年) 72-79頁

(3)天野勝文「政府審議会は記者のウバ捨て山か 記者クラブ同様これも一つの癒着ではないか」『文芸春秋』1993年11月号 296-303頁

(4)天野勝文「新聞人の各種審議会への参加について」新聞労連編『新聞記者を考える』(晩聲社、1994年) 187-211頁

7.「有害」規制監視隊は2004年2月2日に東京都へ提出した意見「「公平・適正」な体制を、東京都が責任を持ってつくるために ―審議会の運営改善策等について―」で、個別指定の適否を判断する東京都青少年健全育成審議会の運営改善を主張している。

▼「「公平・適正」な体制を、東京都が責任を持ってつくるために ―審議会の運営改善策等について―」

http://hp1.cyberstation.ne.jp/straycat/watch/opinion/08.htm

4月20日

 『朝日新聞』(茨城版)33面に「わいせつ物販売の疑いで3人逮捕」という記事が掲載される。記事によると、県警少年課と大宮署は19日、県青少年健全育成条例違反の容疑で自販機業者を逮捕したという。『茨城新聞』23面にも「自販機に有害図書収納 大宮署、3人逮捕」という記事が掲載された。

4月21日

 『東京新聞』(夕刊)に「「少女ら800人を風俗店、AVに紹介」 路上スカウト男2人を逮捕 池袋署」という記事が掲載される。
『朝日新聞』(夕刊)にも「ビデオに少女出演させた疑い 2容疑者逮捕」という記事が掲載された。
『毎日新聞』(夕刊)にも「わいせつビデオに少女あっせん容疑 男2人逮捕」という記事が掲載された。
『読売新聞』(夕刊)にも「少女スカウト逮捕 アダルトビデオに出演させる」という記事が掲載された。
『日本経済新聞』(夕刊)にも「風俗店などに少女800人紹介 容疑の男ら2人逮捕」という記事が掲載された。

【関連情報】

 2004年3月30日に改定・強化された「東京都青少年の健全な育成に関する条例」には、青少年に対し、性風俗店で働くよう勧誘することなどを禁じたスカウト規制が盛り込まれている。同条例は次のページで確認できる。「青少年への勧誘行為の禁止」については、第15条の3参照。なお、この規定は6月1日から施行される。
▼「生活文化局が改定案を説明 文教委員会」

http://hp1.cyberstation.ne.jp/straycat/watch/news/archive/2004/26.htm

4月23日

 『朝日新聞』(福島版)27面に「県青少年健全育成条例違反の容疑者逮捕」という記事が掲載される。記事によると、福島署は21日、県青少年健全育成条例違反の容疑で自販機業者を逮捕したという。
『福島民報』25面にも「有害な雑誌など自販機に入れる 福島署が業者逮捕」という記事が掲載された。

4月26日

 『産経新聞』(東京版)に「改正青少年健全育成条例成立 浄化の成否・・・“やる気”次第」(マンデーリポート 都政の現場から)という記事が掲載される。

4月27日

 『都議会だより』第256号、257号(合併号)に平成16年第1回定例会の概要が掲載される。

4月28日

 『東京新聞』に「家出中3少女風俗店に紹介 容疑で経営者、スカウトマン逮捕」という記事が掲載される。

4月29日

 『読売新聞』の「人生案内」欄に「ポルノ雑誌 放置する夫 暴力的内容、子への影響心配」という相談が掲載される。作家の落合恵子氏が回答している。

5月3日

 『東京新聞』に「かつての著作で知事「性表現と非行、根拠ない」 「不健全図書」指定のきわどさ 「都の判断、全国に波及」 「3回アウトなら休刊」」という特集記事が掲載される。
【関連情報】
1.この記事では、「不健全」図書指定制度(個別指定)について、「業界団体の意見を『参考』に、保護者団体や有識者らでつくる青少年健全育成審議会に諮り、知事が認定するしくみだ」と解説している。ところが、庄司 正・東京新聞編集局文化部長をはじめとする新聞関係者が青少年健全育成審議会の委員に選ばれていることは、まったく触れていない。また、2003年11月17日開催の第524回東京都青少年健全育成審議会では、分量基準を満たさなければ指定されない包括指定を導入するより、分量に係りなく指定できる個別指定を強化すべきだという意見が新聞関係者から出ていたことについても触れていない。なお、3月30日に改定された東京都青少年健全育成条例では、包括指定の導入に代えて、帯紙措置とも連動した個別指定が強化されている。

2.この記事では、福島章・上智大名誉教授(犯罪心理学)の「わいせつな表現などが子供たちを非行などに駆り立てているとする合理的な根拠はない」という話や、奥平康弘・東大名誉教授(憲法学)の「わいせつな雑誌が、青少年に悪影響を与えているという非常に漠然とした情緒的なレベルで、明確な根拠もなく国や自治体が、規制をすることは本来許されない」という話が紹介されている。
 ところが、メディアの影響に関する膨大な研究を調査したアイゼンクとナイアスは、次のように記している。

「脱感作は、動物においても人間においても実験的に十分に証明された、行動と情動反応とを変える方法である。それは神経症的恐怖と不安を治療するのに広く使用され、かなりの成功を収めてきた。ポルノと暴力が提示される条件のもとで、それらが視聴者になんらの効果を与えるはずがないとは、全く思われない。ここでいう脱感作とは、マス・メディアの多くの批評家が、『野獣化』と言っているものに対応する専門用語である。(中略)そのようなシーンには影響力がないという見地を支持する大多数の執筆者は、実際に、この点を論じていない。彼らは、証拠と理論が全く存在していないかのように、それらをすっぽり無視している。これは難点を処理する単純なやり方ではあるが、そんなことをしていたのでは、都合の悪い議論に対して適切な処理をした偏りのない批評家という印象を与えはしない」(H.J.アイゼンク、D.K.B.ナイアス『性・暴力・メディア マスコミの影響力についての真実』岩脇三良訳、1982年、46頁)

 たしかに、悪影響を否定する人々は、悪影響にかかわる脱感作理論や観察学習理論を「すっぽり無視している」ように思われる。脱感作理論や観察学習理論、そして悪影響を示唆する個々の研究結果はどういった理由から否定されるのだろうか。なぜ、悪影響を否定する人々は、「証拠と理論が全く存在していないかのように」主張するのだろうか。
 悪影響をめぐる議論は、何十年も前から延々と続けられてきた。その結果、規制は弱まったのだろうか? 悪影響は否定されたのだろうか? 一定の悪影響はあることを認めたうえで、規制のあり方を議論する方法もあるのではないだろうか。少なくとも、「都合の悪い議論」を避けていては、規制強化の歯止めにもならないことは確かだろう。

3.『東京新聞』は1999年7月26日に「「捜査現場無視」募るいら立ち 警視庁の「完全自殺マニュアル」通報 「有害図書は形骸化」 都「業界努力は有効」」という特集記事で、警視庁が『完全自殺マニュアル』を「有害」図書に指定するよう東京都に通報したことを、「有害図書指定の現状に一石を投じようとする意欲の表われとも受け取れる」と評価。また、同年9月11日の「都審議会が条例見直し含む異例の注文 「完全自殺マニュアル」規制に動き 都、業界に販売自粛を要請 声上げられぬ遺族も多数」という特集記事では、『完全自殺マニュアル』の規制を求める活動家の声を紹介するなど、規制強化を促す報道を繰り返してきた。
 こうした報道が“実を結び”、東京都は2000年5月、青少年問題協議会に条例改定を諮問。2001年3月には青少年条例が改定され、「不健全」図書の指定事由に「自殺」と「犯罪」が追加されたほか、区分陳列の義務化などが行われた。
▼条例改定の軌跡 東京都青少年健全育成条例 平成13年3月改定

http://hp1.cyberstation.ne.jp/straycat/watch/data/kisei/kiseki/tokyoH13-3.htm

(2004/5/3 08:00)

【関連リンク】

個別指定は包括指定よりも「理想的」なのか

規制強化を招いた規制反対運動

宝島社裁判と帯紙措置

出版倫理協議会による流通規制

5月7日

 『サンデー毎日』2004年5月23日号に「石原慎太郎都知事のズサンで強硬な”ビニ本政策” 大揺れ出版界の「内幕」 「あの週刊誌が危ない」とのウワサまで・・・」という記事が掲載される。
【関連情報】
1.毎日新聞社の瀬戸純一論説委員は、「不健全」図書(個別指定)の適否を判断する東京都青少年健全育成審議会の会長代理である。瀬戸会長代理は2003年11月17日開催の第524回東京都青少年健全育成審議会で、「1ヵ所でも、あるいはちょっとでも、それこそ犯罪的なものがあれば、それは短くてもだめ」と指摘し、分量基準を満たさなければ指定されない包括指定を導入するより、分量に係りなく指定できる個別指定を強化すべきだと主張していた。3月30日に改定された東京都青少年健全育成条例では、瀬戸会長代理の主張通り、包括指定の導入に代えて、帯紙措置とも連動した個別指定が強化されている。

 なお、東京都青少年健全育成審議会の委員名簿や近年開催された審議会の議事録等は次のページで確認することができる。
▼「審議会等」

http://www.seikatubunka.metro.tokyo.jp/index9files/singi.htm

2.水野達雄青少年課長は、2004年1月15日開催の第526回東京都青少年健全育成審議会で、「指定図書の選定基準はあるが候補図書の基準はない。それを具体的にして、積極的に諮問をしていきたい」と述べている。個別指定は、1点1点審議会で審査を行うものの、包括指定の基準に至らない図書類でさえ、「不健全(有害)」指定できる制度である。諮問図書の増加は、指定図書の増加に直結する可能性が高い。

▼「諮問のあり方見直しへ 文教委員会」

http://hp1.cyberstation.ne.jp/straycat/watch/news/archive/2004/27.htm

3.元朝日新聞記者の柴山哲也氏は、『日本型メディア・システムの崩壊』(柏書房、1997年)で、「社説では官庁や銀行にディスクロージャー(情報公開)をいいながら、じつは自分自身がもっとも閉鎖的で内部の問題点を隠しているのが日本のメディア産業の特徴である」(188-189頁)と指摘し、次のような改革が必要であると主張している。

「読者本位の組織に変えるために、新聞社や放送局の経営内容やパフォーマンスをガラス張りにして読者・視聴者に公開する必要がある。部数や視聴率がどのように算定されるのか、新聞購読料値上げはなぜ必要か、紙面や内容と関係のない部分でどんな無駄使いがあるのか。さらに、審議会などを通じたメディアと政府、政財官との癒着の関係がどのようなレベルのものか。このような内部情報の公開を通じて読者は日常の紙面の記事、主張と経営行動との乖離、ずれを発見でき、個人の自由意思でジャーナリズムの選別をすることができるようになる」(256頁)

 『サンデー毎日』2004年4月25日号「エロ・グロ規制で始まる「暗黒時代」の足音・・・」や『東京新聞』2004年5月3日付「かつての著作で知事「性表現と非行、根拠ない」 「不健全図書」指定のきわどさ 「都の判断、全国に波及」 「3回アウトなら休刊」」などの記事を読むと、『サンデー毎日』(発行=毎日新聞社)や『東京新聞』は東京都青少年健全育成条例による規制強化に批判的であるかのような印象を受ける。
 ところが、これらの記事は、「不健全」指定の適否を判断する東京都青少年健全育成審議会に毎日新聞や東京新聞の社員が委員として参加していることには、まったく触れていない。また、彼らが審議会で規制強化の方向性を議論していたことにも触れていない。
 メディア関係者が取材者ではなく、委員として審議会に参加することには、「『原則不参加』の方針を打ち出すべき」(天野勝文「現代日本のマス・メディア」天野勝文、松岡由綺雄、村上孝止編『改訂版 現場からみたマスコミ学』(1996年)、9頁)という意見もある。原則不参加が不可能ならば、せめて、審議会を通じた「癒着の関係」を“自ら”公開し、読者・視聴者が「日常の紙面の記事、主張と経営行動との乖離、ずれを発見」し、「個人の自由意思でジャーナリズムの選別をすること」を助けるべきである。
(2004/5/7 07:35)

5月13日

 『日本経済新聞』に「首都圏サミット 事務局設置で合意 税財政改革巡り温度差も」という記事が掲載される。記事によると、東京、埼玉、千葉、神奈川の知事と横浜、川崎、千葉、さいたまの市長でつくる八都県市首脳会議(首都圏サミット)が12日に開催され、青少年に対する「有害」図書の販売や深夜営業店舗への立ち入り規制を強化することなどについて、4都県の条例の共通化を進めることを確認したという。
 また、「コンビニの深夜営業『NO!』 有害図書などヤリ玉 都知事ら規制言及」という記事によると、中田宏・横浜市長は12日の首都圏サミットで、「コンビニ業界のモラルのなさを行政から知らしめるべきだ」と述べ、コンビニにおける「有害」図書の販売方法を批判したという。こうした批判に、石原慎太郎・東京都知事や堂本暁子・千葉県知事も同調しているという。
『朝日新聞』にも「青少年・広域連携問題検討へ 八都県市首脳会議」という記事が掲載された。
『毎日新聞』にも「首都圏サミット 常設的事務局設置へ 推進、慎重の両派応酬の末 テーマは首脳会議で」という記事が掲載された。
『東京新聞』にも「首都圏連携で事務局 8都県市サミット 「三位一体」など検討」という記事が掲載された。
【関連情報】
 首都圏サミットの詳細は14日の『東京新聞』朝刊に掲載される予定。(2004/5/13 05:40)
【関連リンク】
▼「横浜市 「青少年プラン」(素案)を公表 意見を募集中」

http://hp1.cyberstation.ne.jp/straycat/watch/news/archive/2004/31.htm

『読売新聞』に「ビデオ、ゲームにも注意必要」(連載「子どもとテレビ再考」第3回)という記事が掲載される。

5月14日

 『東京新聞』に「8都県市 連携めぐり白熱」という記事が掲載される。12日に開催された8都県市首脳会議(首都圏サミット)における各出席者の発言内容が報じられている。「有害」図書の規制については、次のような意見が出たという。

上田清司・埼玉県知事
「都が規制の強い条例に改正したが、各県がこの条例内容を共通化する作業を進めてもらえればと思う」

堂本暁子・千葉県知事
「広域で徹底的な規制をするために、有害図書を各県が共通して指定することを提案したい」

松沢成文・神奈川県知事
「神奈川では、都の条例改正の内容との共通化を目指し、事務作業を進めている」

中田宏・横浜市長
「納税などに利用されて公共性が高くなってきたコンビニが有害図書を販売することが適切かどうかは、本来ならコンビニの見識の問題だが、ある程度のルールを作るべきだ」

【関連情報】
 前回の首都圏サミットの詳細は『東京新聞』2003年11月14日「団結して国を動かそう 川崎で8都県市サミット」という記事に詳しい。(2004/5/14 09:10)

5月20日

 東京都議会ホームページに「東京都青少年の健全な育成に関する条例の一部を改正する条例」の審議を行った文教委員会の議事録が掲載される。
▼「東京都議会文教委員会速記録第七号 平成十六年三月十九日(金曜日)」

http://www.gikai.metro.tokyo.jp/gijiroku/bunkyo/d3030102.htm

▼「東京都議会文教委員会速記録第八号 平成十六年三月二十二日(月曜日)」

http://www.gikai.metro.tokyo.jp/gijiroku/bunkyo/d3030103.htm

【関連情報】
1.曽根はじめ委員は上記の文教委員会において、個別指定の基準が内規から規則に格上げされることについて次のように述べている。「私が一番心配しているのは、率直にいえば、ほかの県で決まっている包括指定のように、例えばわいせつな図画が冊子全体の半分とか六割とかを占めた場合、それは基準としてひっかかりますよという基準が、この基準の中に盛り込まれれば、事実上の包括指定になってしまうわけです」。
 しかしながら、個別指定とは、分量による基準がないからこそ、包括指定の基準に至らない図書類についても「有害(不健全)」指定できる制度である。実際、東京都青少年健全育成審議会の会長代理である毎日新聞社の瀬戸純一論説委員は、2003年11月17日開催の第524回東京都青少年健全育成審議会で、「1ヵ所でも、あるいはちょっとでも、それこそ犯罪的なものがあれば、それは短くてもだめ」と指摘し、分量基準を満たさなければ指定されない包括指定を導入するより、分量に係りなく指定できる個別指定を強化すべきだと主張していた。分量にかかわりなく指定できる個別指定に問題はないのだろうか。
 なお、3月31日に公布された「東京都青少年の健全な育成に関する条例施行規則」では、当然、個別指定の基準に分量という“制限”は設けられず、分量に係りなく指定できる状態となっている。
 改定後の条例や施行規則は次のページで確認できる。
▼東京の青少年

http://www.seikatubunka.metro.tokyo.jp/index9.htm

 また、改定された部分については次のページで確認できる。

▼「生活文化局が改定案を説明 文教委員会」

http://hp1.cyberstation.ne.jp/straycat/watch/news/archive/2004/26.htm

2.この文教委員会の直後にあたる2004年3月23日に開催された第528回東京都青少年健全育成審議会では、委員から審議会の開催頻度や指定申出制度の「改善」を求める意見が出ている。会議では、小委員会制度を活用するなど、開催頻度を増やすべき、という意見に対し、高嶋茂樹・都民協働部長は「部会制を含め、事務的にいろいろ案をつくりたい」と回答。この案を元に再度議論することが決まっている。また、申出のあった図書は指定されるシステムにすべき、という意見に対しては、水野達夫・青少年課長が「諮問図書の選定指針を設け、幅広く諮問を行う。都民からの声ももう少し多く諮問できると思う」と述べている。(2004/5/21 07:45)

5月25日

 『日本経済新聞』に「万引き本の流通ICタグで防止 中古書店7社、神奈川で実験」という記事が掲載される。
【関連情報】
1.各地の書店組合は青少年による万引き増加について、万引きした書籍を新古書店で簡単に現金化できる仕組みに問題がある、と訴えている。全国の青少年条例には、保護者の委託や同意がない場合は、青少年からの古物の買い取りを禁じているものがある。このため書店組合では、古書の買い取り規制を持たない条例について、規制を新設するよう求めている。
2.鳥取県青少年問題協議会では、書店商業組合の委員が未成年者からの古書買い取り規制を提案していたが2002年10月、青少年条例は改定せず、自主規制を強めるよう行政指導で対処することを決定している。古書店の実態調査を行ったところ、親の承諾書を取るなどの自主規制が既に行われているケースが多かったためだという。
3.秋田県は2003年10月、「秋田県青少年の健全育成と環境浄化に関する条例」を改定し、青少年からの古物(書籍を含む)の買取り規制を新設している。
4.群馬県は2003年12月、「群馬県青少年保護育成条例」を改定し、古物の買い取り規制から除外されていた書籍を規制の対象に含めている。
5.東京都は2004年3月、「東京都青少年の健全な育成に関する条例」を改定し、青少年からの古物(書籍を含む)の買取り規制を新設している。
(2004/5/26 00:35)

【関連リンク】

青少年条例と古物営業法による買取り規制の主な動き ―規制を求める出版業界―

5月26日

 『日本経済新聞』(夕刊)に「「伝説作る」中学の放送室占拠 大田区で今年3月 容疑の10少年逮捕」という記事が掲載される。記事によると、警視庁少年事件課などは26日までに、映画の音楽などを全校に放送し、授業を妨害したとして、当時中学3年生だった少年10人を威力業務妨害などの容疑で逮捕したという。少年らは、映画「バトル・ロワイアルⅡ」をみて感激し、「同じことをやろう」と計画したという。
『朝日新聞』(夕刊)にも「中学放送室立てこもり 「卒業式を前に伝説作る」 容疑の10少年逮捕」という記事が掲載された。
『毎日新聞』(夕刊)にも「放送室を占拠、授業妨害 3月中3男子10人逮捕 大田区立中」という記事が掲載された。
『東京新聞』(夕刊)にも「放送室占拠で10人逮捕 3月当時の中3 教師に暴行も 大田区」という記事が掲載された。
【関連情報】
 『視聴覚教育』2001年5月号に掲載された対談「メディアの暴力について考える ~映画「バトル・ロワイアル」を手がかりに~」では、メディア暴力研究の専門家である佐々木輝美・獨協大学教授と坂本 章・お茶の水女子大学大学院助教授がメディア暴力の影響や教育の必要性について語っている。(2004/5/27 00:10)

5月31日

 『広報 東京都』第702号1面に「青少年が健やかに育つ環境づくりのために! ~大人の責任ある行動が求められています~ 「東京都青少年の健全な育成に関する条例」が改正されました」という記事が掲載される。3月30日に改定された都青少年健全育成条例の主な内容が解説されている。
【関連情報】
1.この記事には、条例の改定について、「改正にあたっては、心身ともに成長過程にある青少年を、有害な情報や環境から守り、近づけないよう、大人が自覚をもって青少年と大人の世界とを分けることが基本となっています。これにより、規制をより効果的にするとともに、大人の責任感の回復を図ることとしました」という説明がある。ところが、第24期東京都青少年問題協議会答申『メディアを中心とした社会環境の変化と青少年の健全育成 メディア社会の進展と青少年施策のあり方』(2002年)には、次のような指摘がある。

「子どもに『能力』が備わっていないとして『知る自由』を制約しつつ、『知る自由』を享受できる前提となる『能力』についての教育、指導をしないままに、氾濫する情報の渦中に子どもを放置することはまったく無責任であり、また、子どもの健全な成長発達権(『教育を受ける権利』)の観点からも疑義がある」(32頁)

 「規制をより効果的にする」といいながら、他方では「氾濫する情報の渦中に子どもを放置」しているとすれば、それこそ「まったく無責任」なのではないだろうか。(2004/5/31 06:30)
2.「東京都青少年の健全な育成に関する条例」や施行規則は次のページで確認できる。
▼東京の青少年

http://www.seikatubunka.metro.tokyo.jp/index9.htm

3.「有害」規制監視隊は条例の改定にあたり、次のような意見を東京都へ提出している。
▼「「公平・適正」な体制を、東京都が責任を持ってつくるために ー審議会の運営改善策等についてー」

http://hp1.cyberstation.ne.jp/straycat/watch/opinion/08.htm

▼「青少年のための教育を、東京都が責任を持って行うために ―効果的な教育方法等について―」

http://hp1.cyberstation.ne.jp/straycat/watch/opinion/09.htm

『朝日新聞』(夕刊)に「少女守れ、誘いの手縛れ 健全育成条例 都、あすから強化」という記事が掲載される。性風俗店などへの勧誘行為を禁止するスカウト規制と、少女から下着などを買い取ることを禁じたブルセラ規制の内容が紹介されている。
【関連情報】

 3月30日に改定された都青少年健全育成条例のうち、スカウト規制、ブルセラ規制、青少年の深夜外出制限、古物売買等の制限、指定刃物の販売制限などは6月1日から、深夜立入制限施設へのカラオケボックスなどの追加、指定図書類の包装義務などは7月1日から施行される。改定によって追加された部分等は次のページで確認できる。(2004/5/31 18:05)

▼「生活文化局が改定案を説明 文教委員会」

http://hp1.cyberstation.ne.jp/straycat/watch/news/archive/2004/26.htm

6月1日

 『日本経済新聞』(夕刊)に「風俗店スカウト18歳未満を規制 都、改正条例スタート」という記事が掲載される。

6月2日

 『宮崎日日新聞』2面に「都青少年条例考 社会が血の汗流し取り組もう」という社説が掲載される。

6月3日

 『東京新聞』(東京版)に「深夜に少女連れ出す 改正青少年条例で初適用 容疑の18歳近く書類送検」という記事が掲載される。記事によると、警視庁少年育成課は2日までに、都青少年健全育成条例違反の容疑で、15歳の少女を深夜に連れ出した18歳のパチンコ店員を摘発、近く書類送検するという。また、新宿区歌舞伎町の路上で少女にホストクラブへ来るよう勧誘した19歳のホストクラブ従業員ら2人に対し、同条例に基づく警告を出したという。
『読売新聞』(東京版)にも「改正青少年条例施行受け一斉補導 警視庁、1人検挙」という記事が掲載された。
『毎日新聞』(東京版)にも「深夜カラオケに少女同伴し検挙 改正条例初適用」という記事が掲載された。
『朝日新聞』にも「スカウト行為規制 ホスト従業員、警告」という記事が掲載された。
『日刊スポーツ』にも「無断外泊、喫煙・・・ 73人を一斉補導 育成条例取り締まり」という記事が掲載された。

『毎日新聞』(夕刊)に「同級生殺害 TVドラマで実行決意 事件前夜カッターで殺害場面」という記事が掲載される。記事によると、長崎県佐世保市の小学生が殺害された事件で家裁に送致された同級生は、「テレビのドラマを見て(殺害を)やろうと思った」と供述しているという。このテレビドラマは、事件前日の5月31日午後9時からTBS系列で放送された「月曜ミステリー劇場」だという。

『読売新聞』(夕刊)に「「会って謝りたい」小6事件 加害女児」という記事が掲載される。記事によると、長崎県佐世保市の小学生が死亡した事件で長崎少年鑑別所に収容された女児は、5年生の時の文集で、「好きな本」として「バトル・ロワイアル」を挙げていたという。

6月4日

 『山陽新聞』4面に「カメラ監視の自販でも× 有害図書販売に罰金 岡山簡裁が全国初判断」という記事が掲載される。

『日刊スポーツ』に「成人図書を封印 出版界自主規制」という記事が掲載される。記事によると、日本雑誌協会などでつくる倫理対策委員会は3日、出版社が青少年に見せるべきでないと判断した本については、表紙と裏表紙をつなぐ帯状のシールを張って出荷する方針を決めたという。
 この他「加害女児カッターで首切るシーン見て決意 水野真紀ドラマをマネ 長崎・小6女児死亡事件」という記事も掲載されている。
【関連情報】
 犯罪社会学とメディア論が専門の村上直之はハワードS.ベッカー『アウトサイダーズ ラベリング理論とはなにか』村上直之訳(1978年)の解説で、「異常」な行動や事件とその「動機」の関係をラベリング理論の観点から説明している。この説明によると、人々は日常、他者の行為の「動機」を問題とせず、その行為の意味を自動的に理解しているが、「異常」な行動や事件が起きると意味の理解が困難となり、「私たちは『異常』な行為者の『動機』を理解しようとする」(263頁)という。そして、この「『異常』な行為者の『動機』」の理解には、次のような機能があるという。

ベッカーが「逸脱動機が逸脱行動を導くのではなく、まったく逆なのだ」(本訳書六〇頁)と述べ、また彼と同様にエリクソン、J・I・キッセらが、「逸脱は行為の内在的性質ではなく、社会の聴衆によって付与された性質である」と語る時、彼らは、行為者の「内的属性」と見做されている「動機」が、他者(あるいは自分自身)の行為を説明し理解可能なものにするために仕組まれた一つの概念装置だということを明らかにしているのである。つまり「動機」は行為者の内部に発見されるのではなく、外部から「付与」されるのであり、この「動機付与」によって、わけのわからぬ行動や出来事の「異常」さをその行為者自身の「内的問題」として処理し、私たちの認知的秩序の均衡を回復するのである。(264-265頁)

 一般的に「動機」とは、行為に先立つものと考えられている。しかし、そうではなく、事後に「他者(あるいは自分自身)」がその行為を解釈した結果だというのである。殺人事件を理解可能なものとし、「私たちの認知的秩序の均衡を回復する」ためにこそ、テレビの影響という「動機」が「他者(あるいは自分自身)」によって、事後的に「付与」されているのかもしれない。(2004/6/4 07:45)

『読売新聞』(夕刊)に「「ぶりっ子」書かれ殺意 佐世保・小6事件 HP掲示板に」という記事が掲載される。記事によると、長崎県佐世保市の事件で家裁に送致された女児は、ホームページに小説「バトル・ロワイアル」をなぞった自作小説を掲載していたという。

6月5日

 『産経新聞』(大阪市内版)26面に「わいせつDVD販売目的で所持 牧方の業者ら逮捕」という記事が掲載される。

京都新聞ホームページに「裏DVD自販機業者を逮捕 大阪府警 約1万点を押収」という記事が掲載される。
▼「裏DVD自販機業者を逮捕 大阪府警 約1万点を押収」

http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2004060500011&genre=C1&area=O10

『毎日新聞』に「殺害手法「バトル・ロワイアル」に酷似」という記事が掲載される。記事によると、小6同級生殺害事件で家裁に送致された女児は、事件の約1ヵ月前、佐世保市内のレンタルビデオ店で「バトル・ロワイアルⅡ」のDVDを借りていたという。15歳未満への貸出は禁止されていたが、女児は姉の会員カードを使っていたという。また、小説「バトル・ロワイアル」は図書館で借りていたという。
【関連情報】
1.佐々木輝美・獨協大学教授は、『メディアと暴力』(勁草書房、1996年)で、次のように指摘している。

「メディア暴力への対応にはメッセージを送るメディア側における対応と、メッセージの受け手側における対応が考えられる。番組の中の暴力シーンを減らしたり、暴力番組の放送時間帯をずらすなどの対策は前者にあたる。このようなメッセージの送り手側からの対応は即効性があり必要不可欠であるが、メッセージの受け手側における対応も同時に考えていく必要があるだろう」(180頁)

 この「メッセージの受け手側における対応」には、具体的には、親子でテレビを共同視聴し、親が暴力シーンに否定的なコメントをする方法や、学校教育でメディア暴力の現実性や適切性に対する子どもたちの態度を変える教育的介入などがあるという。これらは過去の研究結果から効果を期待できるが、効果を高める工夫や逆効果が生じる可能性を減らすための研究も必要であるという。

2.同書には、海外で行われた教育的介入に関する研究がいくつか紹介されている。この中でもとくに興味深いのがヒューズマンらが小学生を対象に行った実験である。この実験では、まず、テレビ暴力は現実的でないこと、普通の人間は問題を解決するために暴力以外の方法をとること――などが教えられた。ところが、事後テストではテレビに対する態度に有意な変化は見られなかったという。
 この9ヶ月後に2回目の実験が行われたが、

「今回は第一回目の実験のように、どちらかというと一方的レクチャーを行うというような教示的な方法をとらなかった。自ら参加しているという気持ちにさせるために、実験者たちは子どもたちにビデオ作りのボランティアを募るという形式をとったのである。そしてそのビデオは、テレビ暴力の害を受けたり、テレビ暴力をまねてしまったために困っているシカゴの子どもたちに見せるためだと説明された。さらに、実験者は、「もちろん君たちはテレビで見たことを信じるほど愚かではないし、見たことをまねすることはよくないとわかっていますね。でもそのことを知らない子どももいるのです。」という説明を行った」(165頁)

という。そして、「何故テレビの暴力をまねすることが悪いのか」などのエッセイが課せられ、その朗読や質疑応答の録画が行われたという。この2~3ヵ月後に事後テストを行ったところ、テレビに対する態度が望ましい方向に有意に変化していたという。
 佐世保市の事件を契機に、単なる規制や「一方的レクチャー」ではなく、「自ら参加しているという気持ちにさせる」といった工夫を施した教育的介入を幅広く実施することが望まれる。また、メディアについては、いつまでも「殺害手法「バトル・ロワイアル」に酷似」、「カッターで首切るシーン見て決意」といったセンセーショナルな報道を繰り返すのではなく、共同視聴や教育的介入の重要性を報じるなど、青少年問題解決に向けた情報と多様な視点の提供という報道の使命を果たすことが望まれる。

3.『視聴覚教育』2001年5月号に掲載された対談「メディアの暴力について考える ~映画「バトル・ロワイアル」を手がかりに~」では、佐々木輝美・獨協大学教授と坂本 章・お茶の水女子大学大学院助教授がメディア暴力の影響や教育的介入の必要性について語っている。(2004/6/5 19:40)

東京新聞』(夕刊)に「映画『バトル・ロワイアル』参考に 小6殺害補導女児 HPに“殺人小説”」という記事が掲載される。

6月6日

 『毎日新聞』に「加害女児 HPで「殺し合う?」 B・ロワイアルのアンケ」という記事が掲載される。記事によると、小6同級生殺害事件で家裁に送致された女児は、自分のホームページで、「バトル・ロワイアル」についてのアンケートを行っていたという。最後の1人まで殺しあうことになったらどうするかを尋ねる内容だったという。
『東京新聞』『日本経済新聞』などにも同様の記事が掲載された。

『朝日新聞』に「「バトル・ロワイアル」 前月、DVD女児借りる」という記事が掲載される。

6月7日

 『朝日新聞』(夕刊)に「佐世保・小6事件 「アイスピックも考えた」 加害女児方法3通り計画」という記事が掲載される。記事によると、長崎県佐世保市で小学生が死亡した事件で家裁に送致された同級生の女児は、カッター以外にもアイスピックで刺すか、首を絞める方法も考えていたという。県警は女児が関心を持っていた小説や映画が行動に影響を与えた可能性があるとみて、調査を進めているという。なお、女児が関心を持っていた「バトル・ロワイアル」の映画には、鎌で首を切りつけるシーンが、原作にはアイスピックで刺す場面があったという。また、女児は自分のホームページで、首を切るシーンを演じた女優を「好きなタレント」として挙げていたという。
【関連情報】
 

メディアの影響については以下の文献が詳しい。
(1)岩男壽美子「゛テレビ暴力"批判に物申す」『Voice』1978年10月号、87-100頁
(2)H.J.アイゼンク、D.K.B.ナイアス『性・暴力・メディア』岩脇三良訳(新曜社、1982年)
(3)岩男寿美子「テレビ暴力画面とその影響」堀江湛編『情報社会とマスコミ』(有斐閣、1988)、209-255頁
(4)小平さち子「欧米にみる“子どもに及ぼす映像描写の影響”研究」『放送研究と調査』1996年9月号、2-21頁
(5)佐々木輝美『メディアと暴力』(勁草書房、1996年)

(6)佐々木輝美、坂本 章「対談 メディアの暴力について考える ~映画「バトル・ロワイアル」を手がかりに~」『視聴覚教育』2001年5月号、30-39頁

(7)坂元 章「10代の青少年と電子メディア ―心と体への影響―」『学術の動向』第6巻第9号(2001年)、22-25頁

(2004/6/7 18:30)

6月8日

 『東京新聞』に「成人向け図書シールで封印 都条例改正受け業界が自主規制」という記事が掲載される。記事によると、日本雑誌協会などでつくる倫理対策委員会は7日、出版社が成人向け図書をシールで封印する自主規制を7月から始めると発表したという。同委員会は、シールを貼る図書は月間150-180種類、計1200万部に上るとみているという。東京都以外に出荷される図書も自主規制の対象になるという。

『日本経済新聞』にも「封印シール対象月150-180種類に 成人向け図書で対策委」という記事が掲載された。

【関連情報】

1.2004年3月30日に改定された東京都青少年健全育成条例では、個別指定された図書類(指定図書類)に包装義務を課しているほか、18禁表示のある図書類(表示図書類)についても包装することを求めている(罰則があるのは指定図書類の包装義務のみ)。また、指定図書類のうち定期刊行物については、表示図書類とするよう勧告できる制度も新設されている。このほか、自販機については、表示図書類などを収納する場合には、年齢識別装置を設置することなどが義務付けられている。

2.自販機に対する年齢識別装置の設置が義務化されたことから、水野達夫青少年担当課長は2004年4月15日、第529回東京都青少年健全育成審議会において、「当面、ビデオテープの諮問につきましては、新たな改正条例が施行されて以降は、諮問を休止したい」と述べている。また、2004年1月15日開催の第526回東京都青少年健全育成審議会では、「指定図書の選定基準はあるが候補図書の基準はない。それを具体的にして、積極的に諮問をしていきたい」と述べている。

 ビデオテープの諮問を減らし、表示図書類ではない図書類を「積極的に諮問」することで、表示図書類を増やす考えなのかもしれない。なお、東京都の個別指定は、出版業界の自主規制(帯紙措置)と連動している。(2004/6/8 06:55)

6月9日

 『毎日新聞』(夕刊)に「同級生殺害 暴力サイト頻繁閲覧 加害女児内容別に整理・保存」という記事が掲載される。記事によると、長崎県佐世保市の小6同級生殺害事件で少年審判開始の決定を受けた女児は、自宅のパソコンで「バトル・ロワイアル」などの殺人、暴力をテーマにした愛好家のホームページを「お気に入り」に登録し、頻繁にアクセスしていたことが長崎県警の調べでわかったという。

『東京新聞』(夕刊)に「小6殺害女児HP 殺人物語サイトにリンク 動脈切る内容酷似 事件の参考に?」という記事が掲載される。記事によると、長崎県小6女児事件の加害女児のホームページには、男子生徒が背後から動脈を切られて死亡するというホラー物語サイトへのリンクがあったという。

6月12日

 『東京新聞』に「わいせつ写真掲載で逮捕」という記事が掲載される。記事によると、警視庁保安課と牛込署は、わいせつな写真を掲載した月刊誌を取次店などに卸したわいせつ図画頒布の疑いで、出版社の社長ら5人を逮捕したという。同社は4年前にわいせつ図画頒布容疑で社長らが逮捕されたため、写真にモザイク処理を施したところ売り上げが半減。「売り上げを伸ばすためにモザイクを薄くした」と供述しているという。
『毎日新聞』にも「わいせつ月刊誌販売容疑で逮捕」という記事が掲載された。
【関連情報】

1.田宮裕「わいせつに関するアメリカ大統領委員会の報告書について(一)(二)」(『ジュリスト』第477号、第478号、1971年)によると、「J・T・クラッパー(以前に大学教授などをつとめたことのある社会学者で、現職はCBSの社会調査所長)」らが委員に選ばれていた「わいせつとポーノグラフィーに関する大統領の諮問委員会」は、1970年に本報告書を発表している。この本報告書では、悪影響の証拠がないこと等を理由に、「同意のある成人に対する性的物件の販売、提示、配布を禁止する法はすべて廃止すべき」と勧告しているという。一方、未成年については、

「成人よりも調査は不十分であり、デイタの信用性も低い。そればかりか、実験のためには性的刺激物を見せる必要があるが、そういう実験じたいが困難だという事情もある。また、世論調査の結果によると、多数は成人の制限の撤廃に賛成しつつ、青少年は別だという意見をもつ。これは無視できない。さらに、未成年者についてはその親が子供の監督上妥当かどうかを自己決定すべきであって、立法はそれを援助するという基本的態度を堅持するのがのぞましい。いくらこのような立法をしても、未成年者から隔離しおおせるかは疑問だし、見せることが利点になる場合もある。こうした事情を総合判断して自らコントロールする権利が親にはある」(田宮裕「わいせつに関するアメリカ大統領委員会の報告書について(二)」『ジュリスト』第478号、1971年、116頁)

といった理由から、「州は、一定の性的物件を未成年に対して商業的に販売しまたは販売のため陳列することを禁止する立法をすべきである」と勧告しているという(本報告書の問題点や本報告書の後に刊行された技術報告書については、H.J.アイゼンク、D.K.B.ナイアス『性・暴力・メディア』岩脇三良訳(新曜社、1982年)が詳しい)。

 ただし、この勧告には、禁止される物について、「委員会としては写真や図画に限るのがよく、文章は除外すべきだと考えている。文章は性教育用に有用なものがあるばかりか、そのうち妥当なものとそうでないものを選別するのは至難のわざで、結局全面的禁止という不当な結果になるおそれもあるからである」というコメントがついているという。

2.各都道府県は、青少年条例に基づき、販売店などに青少年への販売禁止や区分陳列義務などを課す「有害」図書指定を行っている。「有害」図書の指定方式には、個別指定緊急指定包括指定があるが、このうち個別指定と緊急指定では、性表現に限らず、暴力や犯罪、さらには自殺に関する表現などを規制することもできる。また、写真や図画だけでなく、文章を規制することもできる。(2004/6/12 06:00)

『東京新聞』(夕刊)に「暴力映画、年齢確認を レンタルビデオTSUTAYA 小6事件で徹底指示」という記事が掲載される。記事によると、小6女児殺害事件を受け、レンタルビデオ店「TSUTAYA」を展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブは12日までに、映倫のR-15(15歳未満の観賞制限)、R-18(18歳未満の観賞制限)指定の作品を貸し出す際には、会員の年齢確認を徹底するよう全国の店舗に指示したという。
【関連情報】

1.メディアの影響については以下の文献が詳しい。

(1)岩男壽美子「゛テレビ暴力"批判に物申す」『Voice』1978年10月号、87-100頁

(2)H.J.アイゼンク、D.K.B.ナイアス『性・暴力・メディア』岩脇三良訳(新曜社、1982年)

(3)岩男寿美子「テレビ暴力画面とその影響」堀江湛編『情報社会とマスコミ』(有斐閣、1988)、209-255頁

(4)小平さち子「欧米にみる“子どもに及ぼす映像描写の影響”研究」『放送研究と調査』1996年9月号、2-21頁

(5)佐々木輝美『メディアと暴力』(勁草書房、1996年)

(6)佐々木輝美、坂本 章「対談 メディアの暴力について考える ~映画「バトル・ロワイアル」を手がかりに~」『視聴覚教育』2001年5月号、30-39頁

(7)坂元 章「10代の青少年と電子メディア ―心と体への影響―」『学術の動向』第6巻第9号(2001年)、22-25頁

2.メディアの影響をめぐっては、「メディア上の性・暴力表現が、受け手である青少年を暴力や性的逸脱に向かわせるという『強力効果説』は、社会学者のジョセフ・クラッパーらをはじめとする数多くの実証的な調査研究の結果、現在までに、ほぼ否定されている」(斎藤環「条例強化というお節介には断固抵抗する」『中央公論』2004年1月号、44頁)といった意見がある。

 だが、H.J.アイゼンク、D.K.B.ナイアス『性・暴力・メディア』岩脇三良訳(新曜社、1982年)や佐々木輝美『メディアと暴力』(勁草書房、1996年)などによると、悪影響を支持する証拠は多く、「現在までに、ほぼ否定されている」のは、むしろ悪影響はないとする立場である。たとえば、坂本 章・お茶の水女子大学大学院助教授は、佐々木輝美・獨協大学教授との対談で、次のように述べている。

「先ほど、映像の表現者に、いろいろな研究の知見が知られていないことが問題であるという話がありましたが、これは、研究者側にも責任があることなのです。実は佐々木先生は、『メディアと暴力』という著書を1996年に出されておられるのですが、それが日本においては非常に画期的だったんです。それで、メディア暴力の影響がかなり実証されていることを1996年の段階で、日本の研究者がかなり知るようになったのです」(佐々木輝美、坂本 章「対談 メディアの暴力について考える ~映画「バトル・ロワイアル」を手がかりに~」『視聴覚教育』2001年5月号、35頁)

 また、アイゼンクとナイアスは、暴力シーンなどに影響力がないとする人々を次のように批判している。

「彼らは、証拠と理論が全く存在していないかのように、それらをすっぽり無視している。これは難点を処理する単純なやり方ではあるが、そんなことをしていたのでは、都合の悪い議論に対して適切な処理をした偏りのない批評家という印象を与えはしない」(H.J.アイゼンク、D.K.B.ナイアス『性・暴力・メディア』岩脇三良訳、1982年、46頁)

 たしかに、悪影響を否定する人々は、都合の悪い証拠と理論を「すっぽり無視している」ように思われる。悪影響を否定するのであれば、『メディアと暴力』や『性・暴力・メディア』などに示されている証拠と理論に適切な批判をすべきではないだろうか。

 悪影響をめぐる議論は、何十年も前から延々と続けられてきた。その結果、規制は弱まったのだろうか? 一定の悪影響はあることを認めたうえで、教育的介入の必要性や、規制のあり方を議論する方法もあるのではないだろうか? 少なくとも、「都合の悪い議論」を避けていては、規制強化の歯止めにもならないことは確かだろう。(2004/6/13 07:00)

6月14日

 警視庁ホームページに、3月に改定・強化された「東京都青少年の健全な育成に関する条例」の概要が掲載される。「東京都青少年の健全な育成に関する条例が変わりました 青少年の深夜の夜遊びなどを規制!」というパンフレットをダウンロードすることもできる。

▼「東京都青少年の健全な育成に関する条例の一部改正について」

http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/seian/ken_iku/ken_iku.htm

『毎日新聞』(夕刊)に「同級生殺害 約10人と交換日記 バトル・ロワイアル記述も」という記事が掲載される。記事によると、長崎県佐世保市の小6同級生殺害事件で観護措置中の女児は、死亡した女児を含む同級生約10人と交換日記をしていたという。日記には「バトル・ロワイアル」に関する記述もあったという。

【関連情報】

1.毎日新聞社の瀬戸純一論説委員は、「不健全」図書(個別指定)の適否を判断する東京都青少年健全育成審議会の会長代理である。瀬戸会長代理は2003年11月17日開催の第524回東京都青少年健全育成審議会で、「1ヵ所でも、あるいはちょっとでも、それこそ犯罪的なものがあれば、それは短くてもだめ」と指摘し、分量基準を満たさなければ指定されない包括指定を導入するより、分量に係りなく指定できる個別指定を強化すべきだと主張していた。3月30日に改定された東京都青少年健全育成条例では、瀬戸会長代理の主張通り、包括指定の導入に代えて、帯紙措置とも連動した個別指定が強化されている。

 なお、東京都青少年健全育成審議会の委員名簿や近年開催された審議会の議事録等は次のページで確認することができる。

▼「審議会等」

http://www.seikatubunka.metro.tokyo.jp/index9files/singi.htm

2.毎日新聞社が発行する『サンデー毎日』2004年4月25日号や2004年5月23日号には、東京都による青少年条例の改定・強化を批判する(かのような)記事が掲載されている。ところが、これらの記事は、「不健全」指定の適否を判断する東京都青少年健全育成審議会に、毎日新聞をはじめとする新聞社の人間が委員として参加していることには、まったく触れていない。また、彼らが審議会で規制強化の方向性を議論していたことにも触れていない。

 メディア関係者が取材者ではなく、委員として審議会に参加することには、「『原則不参加』の方針を打ち出すべき」(天野勝文「現代日本のマス・メディア」天野勝文、松岡由綺雄、村上孝止編『改訂版 現場からみたマスコミ学』(1996年)、9頁)という意見もある。原則不参加が不可能ならば、せめて、審議会を通じた「癒着の関係」を“自ら”公開すべきではないだろうか。

3.メディアと審議会の関係については、以下の文献が詳しい。

(1)天野勝文「「取り込まれる」ジャーナリスト」『総合ジャーナリズム研究』第128号(1989年) 46-52頁

(2)天野勝文「「取り込まれる」マスコミ人 全国版」『総合ジャーナリズム研究』第144号(1993年) 72-79頁

(3)天野勝文「政府審議会は記者のウバ捨て山か 記者クラブ同様これも一つの癒着ではないか」『文芸春秋』1993年11月号 296-303頁

(4)天野勝文「新聞人の各種審議会への参加について」新聞労連編『新聞記者を考える』(晩聲社、1994年) 187-211頁

(2004/6/15 06:30)

 

6月19日

 『東京新聞』(夕刊)に「週刊ポスト ヘアヌード掲載中止 「家庭でも読める」目指し」という記事が掲載される。記事によると、小学館が発行する雑誌『週刊ポスト』は、5月24日発売の6月4日号からヘアヌードの掲載を中止しているほか、6月28日発売の7月9日号からはバストが露出した写真も原則として載せない方針だという。海老原高明編集長は、東京都青少年健全育成条例の改定・強化との関係について、「規制の動きとは直接関係ない」と話しているという。『朝日新聞』(夕刊)には「週刊ポスト「脱ヌード」宣言」、『日本経済新聞』(夕刊)には「ヘアヌード掲載中止 週刊ポスト「使命終えた」」という記事が掲載された。

【関連情報】

1.2004年3月30日に改定された東京都青少年健全育成条例では、分量基準を満たさなければ指定されない包括指定の導入に代えて、帯紙措置とも連動した個別指定が強化されている個別指定は分量による基準がないため、包括指定の基準に達していない図書類についても、「不健全」指定することができる。また、包括指定と異なり、性表現に限らず、暴力や犯罪、さらには自殺に関する表現なども規制できるほか、写真や絵だけでなく、文章も規制対象となる。

 なお、東京都青少年健全育成審議会の会長代理である毎日新聞社の瀬戸純一論説委員は、2003年11月17日開催の第524回東京都青少年健全育成審議会で、「1ヵ所でも、あるいはちょっとでも、それこそ犯罪的なものがあれば、それは短くてもだめ」と指摘し、分量基準を満たさなければ指定されない包括指定を導入するより、分量に係りなく指定できる個別指定を強化すべきだと主張していた。

 

2.『東京新聞』2004年6月8日付朝刊「成人向け図書シールで封印 都条例改正受け業界が自主規制」という記事によると、日本雑誌協会などでつくる倫理対策委員会は7日、出版社が成人向け図書をシールで封印する自主規制を7月から始めると発表したという。

 なお、2004年3月30日に改定された東京都青少年健全育成条例では、個別指定図書類への包装義務が新設されたほか、指定図書類のうち定期刊行物に対しては、18禁表示をするよう知事が勧告できる制度も新設されている。また、自販機に18禁表示のある図書類を収納する場合には、年齢識別装置を設置することも義務付けられている。

 

3.自販機に対する年齢識別装置の設置が義務化されたことから、水野達夫青少年担当課長は2004年4月15日、第529回東京都青少年健全育成審議会において、「当面、ビデオテープの諮問につきましては、新たな改正条例が施行されて以降は、諮問を休止したい」と述べている。また、2004年1月15日開催の第526回東京都青少年健全育成審議会では、「指定図書の選定基準はあるが候補図書の基準はない。それを具体的にして、積極的に諮問をしていきたい」と述べている。

 ビデオテープの諮問を減らし、表示図書類ではない図書類を「積極的に諮問」することで、表示図書類を増やす考えなのかもしれない。

 

4.「東京都青少年の健全な育成に関する条例」や施行規則は次のページで確認できる。

▼東京の青少年

http://www.seikatubunka.metro.tokyo.jp/index9.htm

 

5.東京都青少年健全育成審議会の運営について定めた「東京都青少年健全育成審議会運営要領」は次のページで確認できる。

▼「審議会運営要領を改定 6月1日から施行」

http://hp1.cyberstation.ne.jp/straycat/watch/news/archive/2004/32.htm

(2004/6/19 18:10)

 

6月20日

1.『日刊スポーツ』に「週刊ポスト ヌードやめます」という記事が掲載される。記事によると、海老原編集長は、東京都青少年健全育成条例の改定・強化との関係について、「とんでもない条例だが、今のままでもポストが規制の対象になるとは思わない」と述べ、関連は否定しているという。

【関連情報】

 2004年3月30日に改定された東京都青少年健全育成条例では、包括指定の導入に代えて、帯紙措置とも連動した個別指定が強化されている。個別指定は分量による基準がないため、包括指定の基準に達していない図書類についても、「不健全」指定することができる。また、包括指定と異なり、性表現に限らず、暴力や犯罪、さらには自殺に関する表現も規制できるほか、写真や絵だけでなく、文章も規制対象となる。

 したがって、犯罪や自殺などを扱った記事があれば、性表現の有無や分量に関係なく、指定されてしまう可能性はある。分量にかかわりなく、また、文章まで規制対象となる個別指定に問題はないのだろうか。さらに、新聞社の人間が指定の適否を判断する東京都青少年健全育成審議会に委員として参加していることに問題はないのだろうか。(2004/6/20 07:40)

 

2.『毎日新聞』に「10代の心なぜ捕らえた バトル・ロワイアル 殺し合いの荒涼世界」という記事が掲載される。記事では、小6同級生殺害事件で鑑定留置中の女児が「バトル・ロワイアルⅡ」のDVDを借りていたことから、「「バトル・ロワイアル」(BR)の世界が女児の心を捕らえ、凶行に影響を及ぼしていた」と主張。また、監督や小説家、漫画家に対して、「作品の作り手は事件後、口を閉ざす」と批判している。

 

6月21日

 『東京新聞』に「都青少年育成条例の“健全”度」という特集記事が掲載される。出版業界による自主規制と都条例の関係について報じている。

【関連情報】

1.この記事では、帯紙措置について、「出倫協は、都の指定を三回連続、あるいは年に五回受けた図書は、表紙に「十八歳未満には販売できない」とする帯紙をつけなければ取次店で扱わないとする自主ルールを定めている」と解説している。

 ここでいう、「都の指定」とは具体的には、東京都青少年健全育成審議会による指定を意味する。この東京都青少年健全育成審議会には、東京新聞の庄司 正・編集局文化部長をはじめとする新聞関係者が委員に選ばれているが、この記事はそのことについてまったく触れていない。

 都条例の「“健全”度」を検証する前に、東京新聞をはじめとする新聞社の「“健全”度」を検証すべきである。

 

2.帯紙措置が適用された最近の例としては、コアマガジン発行の雑誌『お宝ワイドショー』(隔月刊)が、2003年8月(第521回)、10月(第523回)、12月(第525回)の東京都青少年健全育成審議会で連続3回「不健全」指定を受け、休刊している。

 東京都青少年健全育成審議会には、新聞社から3人の委員が選ばれているが、第521回、第523回、第525回いずれの審議会にも出席していたのは、東京新聞の庄司 正・編集局文化部長だけである。都条例の「“健全”度」を検証する前に、東京新聞の「“健全”度」を検証すべきである。

▼東京都「不健全」指定状況一覧

http://hp1.cyberstation.ne.jp/straycat/watch/data/jyourei/sitei/tokyo.htm

 

3.『東京新聞』は1999年7月26日に「「捜査現場無視」募るいら立ち 警視庁の「完全自殺マニュアル」通報 「有害図書は形骸化」 都「業界努力は有効」」という特集記事で、警視庁が『完全自殺マニュアル』を「有害」図書に指定するよう東京都に通報したことを、「有害図書指定の現状に一石を投じようとする意欲の表われとも受け取れる」と評価。また、同年9月11日の「都審議会が条例見直し含む異例の注文 「完全自殺マニュアル」規制に動き 都、業界に販売自粛を要請 声上げられぬ遺族も多数」という特集記事では、『完全自殺マニュアル』の規制を求める活動家の声を紹介するなど、規制強化を促す報道を繰り返してきた。

 こうした報道が“実を結び”、東京都は2000年5月、青少年問題協議会に条例改定を諮問。2001年3月には青少年条例が改定され、「不健全」図書の指定事由に「自殺」と「犯罪」が追加されたほか、区分陳列の義務化や18禁表示のある図書類(表示図書類)への規制が新設されている。

 都条例の「“健全”度」を検証する前に、東京新聞の「“健全”度」を検証すべきである。

▼条例改定の軌跡 東京都青少年健全育成条例 平成13年3月改定

http://hp1.cyberstation.ne.jp/straycat/watch/data/kisei/kiseki/tokyoH13-3.htm

 

4.メディアに対する規制と操作については、次のような説明がある。

「規制が、権力や資本によってつごうの悪いことを報道させない、ということであるのに対し、操作とは、権力や資本にとってつごうの良いように報道をあやつる、ということである」(新井直之「現代ジャーナリズムの変容」内川芳美・新井直之編『日本のジャーナリズム』、1983年、150頁)

 都条例による規制強化を批判する(かのような)記事が掲載されても、実際に指定の適否を判断する東京都青少年健全育成審議会の問題点は報じられない。

 これは、東京新聞をはじめとする新聞社が、「不健全」図書の審査などを行う東京都青少年健全育成審議会に委員として参加し、公的規制のプロセスに組み込まれていることと無関係なのだろうか? また、規制強化を促す報道を行ってきた「実績」とも無関係なのだろうか?

 都条例の「“健全”度」を検証する前に、東京新聞をはじめとする新聞社の「“健全”度」を検証すべきである。

 

5.「有害」規制監視隊では、都条例の改定にあたり、東京都青少年健全育成審議会の運営改善を求める意見を東京都へ提出している。

▼「「公平・適正」な体制を、東京都が責任を持ってつくるために ー審議会の運営改善策等についてー」

http://hp1.cyberstation.ne.jp/straycat/watch/opinion/08.htm

(2004/6/21 12:15)

【関連リンク】

宝島社裁判と帯紙措置

出版倫理協議会による流通規制

東京新聞が主導した「活字本」規制

 

6月22日

1.『東京新聞』に「週刊ポスト 脱ヌードのわけ 読者離れに規制強化追い打ち」という記事が掲載される。

 

2.『埼玉新聞』19面に「マンガ喫茶 深夜入店禁止 県青少年育成条例 県が改正案骨子を発表 「スカウト」行為も罰則 9月県議会に提出へ」という記事が掲載される。

 

6月23日

1.『毎日新聞』(夕刊)に「突き落とし中2少女 母と口論 保護も 攻撃的な性格 過去にトラブル」という記事が掲載される。記事には、「同級生殺人と共通」という作田 明・聖学院大講師(犯罪心理学)の話も掲載されている。この中で作田氏は、「現代社会はテレビやインターネットに攻撃的な情報があふれ、人が人に危害を加えることへの抵抗が薄まっていく恐れがある」などと述べている。

 

2.『東京新聞』(夕刊)「男児突き落とし 「今は後悔している」 補導少女、聴取に淡々と」という記事が掲載される。記事には、福島 章・上智大名誉教授(犯罪心理学)の話なども掲載されている。この中で福島氏は、「少年非行の低年齢化の象徴だろう。最近はインターネットやテレビなどの情報化によって犯罪に関するさまざまな情報に触れる機会が増えたのが大きい」などと述べている。

【関連情報】

 大阪府は2003年3月に青少年条例を改定したさい、第8条「府の基本施策等」に、「青少年が情報社会において自律性や自主性をもって対応できるようにするための取組を推し進めること」を追加。2004年1月には『青少年メディア環境調査報告書』を公表し、「メディアリテラシーの教材を作ったりし、普及に努めたい」(『大阪日日新聞』2004年1月13日付朝刊)という方針を示している。

 また第24期東京都青少年問題協議会は『メディアを中心とした社会環境の変化と青少年の健全育成 メディア社会の進展と青少年施策のあり方』(2002年)で、次のように指摘している。

「子どもに『能力』が備わっていないとして『知る自由』を制約しつつ、『知る自由』を享受できる前提となる『能力』についての教育、指導をしないままに、氾濫する情報の渦中に子どもを放置することはまったく無責任であり、また、子どもの健全な成長発達権(『教育を受ける権利』)の観点からも疑義がある」(32頁)

 情報化が進めば進むほど、「青少年が情報社会において自律性や自主性をもって対応できるようにするための取組」が重要になることは間違いない。そして、そうした取組みを行わず、「氾濫する情報の渦中に子どもを放置することはまったく無責任」という意識が広まる可能性も高い。規制に偏ることなく、いわゆる「メディア教育」が進展することを期待したい。(2004/6/26 07:50)

 

6月25日

 『毎日新聞』に「メーカーとNPOが協力し「安全教室」 親子で危険性学ぶ 「特性理解して利用を」」という記事が掲載される。親子でネットの危険性などを学ぶ「ネット安全教室」やインターネット協会が作成した「インターネットを利用する子供のためのルールとマナー集」について紹介している。

【関連リンク】

財団法人インターネット協会

 

6月26日

 『読売新聞』(大阪版)29面に「適正な図書類販売81業者に文書通知 府警、異例の要請」という記事が掲載される。

 

6月28日

1.『読売新聞』に「佐世保・小6事件1か月 全国の小学校は・・・ 命の尊さ力説/教員がメールチェック/カッター持参禁止 再発防止策 手探り」という記事が掲載される。記事には、「懸命さ評価するが対症療法的な印象」という尾木直樹・法政大教授の話も掲載されている。この中で尾木氏は、「判断力の未熟な子どもたちが、パソコンでチャットをしたり、ホームページを開いたりすることについては、ガイドラインを設けるなど、一定の規制が必要な時期にきていると思う」などと述べている。

【関連情報】

 『朝日新聞』2004年6月27日付朝刊「「心の教育」どこへ」という記事では、長崎県で「心の教育」に取組む人々を取材している。また、「事件のたびに充実訴え 文科省」という記事では、97年の神戸児童連続殺傷事件をきっかけに「心の教育」がクローズアップされているが、「その後も事件は絶えない」「事件が起きると「心の教育」の充実を訴えることが続いている」と指摘している。(2004/6/28 07:35)

 

2.『毎日新聞』に「「伝説作りたい」・・・放送室を占拠した生徒たち」という記事が掲載される。東京都大田区の中学で今年3月、生徒10人が放送室を占拠し、映画「バトル・ロワイアル」のせりふを校内に流したとされる事件について詳しく報じている。この他、「ネット教育 民間IT技術者派遣 「モラル」指導の教員増目指す 文科省 推進組織設立へ」という記事も掲載されている。

 

6月29日

 『読売新聞』(横浜版)34面に「有害図書業者を家宅捜索 県警など 泉区で自販機1台押収」という記事が掲載される。

 

6月30日

1.『広報 東京都』第703号に「7月1日から東京都青少年健全育成協力員の活動が始まります」という記事が掲載される。3月30日の条例改定で導入され、7月1日から始まる「東京都青少年健全育成協力員」制度について解説している。

 この記事によると、各区市町村などから推薦された協力員は、個別指定された図書(指定図書)や18禁表示のある図書(表示図書)の区分陳列状況を調査し、東京都に報告。都はこの報告をもとに立ち入り調査を行い、指導するという。

 

2.『朝日新聞』(夕刊)に「ポルノサイト法規制ダメ 米最高裁「言論の自由侵害の恐れ」」という記事が掲載される。記事によると、米連邦最高裁は29日、「青少年オンライン保護法」の施行を差し止める判断を下したという。また、「有害サイトへの接続を不可能にするソフトウェアは成人の権利を侵さずに青少年を守る」として、法規制ではなく、ソフトウェアの開発など、技術面で対応すべきだとの考えを示したという。

【関連情報】

1.田宮裕「わいせつに関するアメリカ大統領委員会の報告書について(一)(二)」(『ジュリスト』第477号、第478号、1971年)によると、「J・T・クラッパー(以前に大学教授などをつとめたことのある社会学者で、現職はCBSの社会調査所長)」らが委員に選ばれていた「わいせつとポーノグラフィーに関する大統領の諮問委員会」は、1970年に本報告書を発表している。この本報告書では、悪影響の証拠がないこと等を理由に、「同意のある成人に対する性的物件の販売、提示、配布を禁止する法はすべて廃止すべき」と勧告しているという。一方、未成年については、

「成人よりも調査は不十分であり、デイタの信用性も低い。そればかりか、実験のためには性的刺激物を見せる必要があるが、そういう実験じたいが困難だという事情もある。また、世論調査の結果によると、多数は成人の制限の撤廃に賛成しつつ、青少年は別だという意見をもつ。これは無視できない。さらに、未成年者についてはその親が子供の監督上妥当かどうかを自己決定すべきであって、立法はそれを援助するという基本的態度を堅持するのがのぞましい。いくらこのような立法をしても、未成年者から隔離しおおせるかは疑問だし、見せることが利点になる場合もある。こうした事情を総合判断して自らコントロールする権利が親にはある」(田宮裕「わいせつに関するアメリカ大統領委員会の報告書について(二)」『ジュリスト』第478号、1971年、116頁)

といった理由から、「州は、一定の性的物件を未成年に対して商業的に販売しまたは販売のため陳列することを禁止する立法をすべきである」と勧告しているという(本報告書の問題点や本報告書の後に刊行された技術報告書については、H.J.アイゼンク、D.K.B.ナイアス『性・暴力・メディア』岩脇三良訳(新曜社、1982年)が詳しい)。

 ただし、この勧告には、禁止される物について、「委員会としては写真や図画に限るのがよく、文章は除外すべきだと考えている。文章は性教育用に有用なものがあるばかりか、そのうち妥当なものとそうでないものを選別するのは至難のわざで、結局全面的禁止という不当な結果になるおそれもあるからである」というコメントがついているという。

 

2.各都道府県は、青少年条例に基づき、販売店などに青少年への販売禁止や区分陳列義務などを課す「有害」図書指定を行っている。「有害」図書の指定方式には、個別指定緊急指定包括指定があるが、このうち個別指定と緊急指定では、性表現に限らず、暴力や犯罪、さらには自殺に関する表現などを規制することもできる。また、写真や図画だけでなく、文章を規制することもできる。様々な内容を規制できることに加え、文章まで規制される個別指定と緊急指定に問題はないのだろうか。(2004/6/30 21:35)

 

3.『毎日新聞』(夕刊)に「成人誌に封印 都条例改正で業界自主規制 あすからコンビニ、書店に」という記事が掲載される。記事によると、7月から封印されるのは約350種の成人誌のうち、約100種だという。この他、寺脇 研・文化庁文化部長による「少年事件と映画バッシング 慎重さ欠く議論が心配 「バトル・ロワイアル」をめぐって」という記事も掲載されている。

【関連情報】

1.『新文化』2004年2月26日付「不健全図書の自主規制求める FC協会」という記事によると、日本フランチャイズチェーン協会は2月16日、出版倫理協議会に対し、「不健全」図書の包装・帯封の完全実施など、自主規制の強化を要請していたという。

 

2.2004年3月30日に改定された東京都青少年健全育成条例では、個別指定された図書類(指定図書類)に包装義務を課しているほか、18禁表示のある図書類(表示図書類)についても包装することを求めている(罰則があるのは指定図書類の包装義務のみ)。また、指定図書類のうち定期刊行物に対しては、表示図書類とするよう勧告できる制度も新設されている。

 

3.毎日新聞社の瀬戸純一論説委員は、「不健全」図書(個別指定)の適否を判断する東京都青少年健全育成審議会の会長代理である。瀬戸会長代理は2003年11月17日開催の第524回東京都青少年健全育成審議会で、「1ヵ所でも、あるいはちょっとでも、それこそ犯罪的なものがあれば、それは短くてもだめ」と指摘し、分量基準を満たさなければ指定されない包括指定を導入するより、分量に係りなく指定できる個別指定を強化すべきだと主張していた。3月30日に改定された東京都青少年健全育成条例では、瀬戸会長代理の主張通り、包括指定の導入に代えて、帯紙措置とも連動した個別指定が強化されている。

 このように、東京都青少年健全育成審議会には、毎日新聞をはじめとする新聞社の人間が委員として参加し、規制強化の方向性まで議論していた。ところが、こうした事実はまったく報道されない。一体どういうわけなのだろうか?

 なお、東京都青少年健全育成審議会の委員名簿や近年開催された審議会の議事録等は次のページで確認することができる。

審議会等

http://www.seikatubunka.metro.tokyo.jp/index9files/singi.htm

 

4.東京都の水野達雄青少年課長は、2004年1月15日開催の第526回東京都青少年健全育成審議会で、「指定図書の選定基準はあるが候補図書の基準はない。それを具体的にして、積極的に諮問をしていきたい」と述べている。表示図書類ではない図書類を「積極的に諮問」することで、表示図書類を増やす考えなのかもしれない。

 なお、個別指定は、1点1点審議会で審査を行うものの、包括指定の基準に至らない図書類でさえ、「不健全(有害)」指定できる。また、包括指定と異なり、写真や絵だけでなく、文章も規制対象となるほか、暴力や犯罪さらには自殺に関する表現を規制することもできる。(2004/6/30 18:45)

2004年7月~12月


もどる